特別授業「記者にとってのロシア極東」を行いました
特別授業「記者にとってのロシア極東」が、7月20日(木)に行われました。
講師の相原秀起氏は、1985年に北海道新聞に入社されて以来、社会部、根室支局、1995年からはサハリンのユジノ・サハリンスク支局駐在となり、現在は北海道新聞函館支社報道部長を務めておられます。北海道大学在学中に探検部で得た豊富な知識や経験を発揮しロシア極東を踏破されてきた成果については、道新読者に伝えるに留まらず、『新サハリン探検記―間宮林蔵の道を行く』(1997年)、『ロシア極東 秘境を歩く 北千島・サハリン・オホーツク』(2016年)、『一九四五 占守島の真実 少年戦車兵が見た最後の戦場』(2017年)といった本にまとめられ、広く発信されています。
このたびの特別講義では、「記者にとってのロシア極東」ということで、冒頭、1992年7月に報道陣だけのビザなし交流で訪れた国後島で、原生林、シマフクロウ、蟹などの豊富な水産資源など、北海道が失ってしまったすばらしい自然が残っていることに衝撃を受けたことから始まりました。
続いて、北方領土の玄関口にある根室支局は、1991年のゴルバチョフ・ソ連大統領来日で北方領土返還への期待が高まると、その日に備え増築できるよう設計されたこと、外務省ロシア課は北方領土返還運動原点のまちである根室に関する情報を道新の根室版から得ていること、新聞社で唯一サハリンに支局を置いているのが道新であることなどに触れられ、新聞には、インターネット情報で流れる程度の情報ではなく、記者が自分の経験や足で稼いだ情報があると、「記者」としての矜持が語られました。
長年の経験から、取材フィールドであるロシア極東の魅力について、1「未知・未踏」に満ちている、2取材は人脈によって決まる、3ハイリスク・ハイリターン、4手探りで取材する楽しみ、と4点にまとめ、「ロシアで生きる楽しみをわかってほしい」、と話されました。
これまでロシア極東で取材してきた映像や写真をスクリーンに写しながら、間宮林蔵の足跡をたどった際にサハリン島と対岸の大陸の最も狭い海峡の海水を舐めてみたら塩分が少なく驚いたこと(ここから流氷が生まれる)、林蔵が200年以上も前に歩いたと思われるかつての道を探り出した時の感動、1950年代にスターリンの命で始まったサハリンと大陸をつなぐ海底トンネル(その死によってプロジェクトは中断)の入り口まで行き、また北極圏(北緯66度以北)に位置するサハ共和国の永久凍土の凍解によって出土したユカギルマンモスを間近で取材するなど、マスコミが誰も知らない場所・モノを取材してきた様々な経験が語られました。
こうした長年の取材経験から導き出されたロシアとロシア人の魅力は、1「ロシアの良さは地方に行かないとわからない」、2ロシア人は苦境にあるほど地力を出す、3想定を超えた感動をすることがよくある、4日本との歴史的なつながりがある、とまとめ、それぞれの具体例を挙げられました。
「ロシアの取材の深さは、ロシア人が奥深いから」、「オホーツクの館長が「我々は大切な隣人」と言っていたが、その歴史を大切にしたい」。「ロシアを志すならば、人脈を生かし、良い人生を進んでほしい。ロシア人というのはそれだけの人であり、隣人だから」、という学生への応援メッセージで講義は結ばれました。
学生たちは大いに刺激を受けました。
・人脈を大切にするロシア人のメンタリティーに気付かされた
・インターネットに出ていない事を書くのが新聞記者だということがわかった
・ロシア極東の大自然の魅力が強く印象に残った
など、様々な感想が聞かれました。
90分の講義は、ロシア極東の魅力、そしてロシア極東に生きるロシア人との向き合い方について、ロシア極東を長年相手にしてきたプロから、将来ロシアと関わる仕事を志す学生たちへのメッセージでした。
どうもありがとうございました。