特別授業「ロシアと私」
1月19日(金)の4限目、今年度3回目となる全学生を対象とした特別授業を開催しました。
今回の講師は元外交官で現在は日本たばこ産業株式会社(JT)国際担当顧問の内田一彦氏で、“Россия и Я(ロシアと私)”と題して外務省時代のことを中心にお話しいただきました。
学生時代に文学を通じてロシアに惹かれ、それを職業とするために外務省入省後2年間の研修制度がある専門職試験を受験しモスクワ大学に留学したこと、しかし当時のソ連はアフガニスタン侵攻により国際的に非難を浴びていた厳しい時代であり、留学生とはいえ外交官の卵であった内田氏は憧れのモスクワ大学の寮に住むことはかなわず、外国人専用アパートに住まい、ロシア人との自由な接触は困難な状況だったそうです。
しかも授業は週2コマしかなくクラスメイトは外国人ばかりだったため、その状況を打破し、ロシア語を習得するために新聞の翻訳や映画館・劇場通い、交通機関でもロシア人に話しかけ、貴重な学習の場としたこと、ロシア国内を可能な限り鉄道で旅行することでロシア人との接触を増やし、モスクワ人とは違う地方の人々との遭遇やロシアの生活の一端に触れることでコミュニケーション力、対応能力(危機対処能力)、交渉力、忍耐力などを身に付けていったとのこと。外国人が行けるところが限られたソ連時代でもバルト三国やウクライナ、コーカサスまでできる限り出掛け、それは今でも自分以上にソ連国内を旅行した外務省職員はいないと自負されているそうです。
外務省勤務のうち20年以上をロシア・CIS諸国の在外公館で働き、国益の実現に力を注いだことや、自分の国を愛すること、そして相手の国を愛することが大切であり、どこでもどんな国でも楽しく仕事し生活しようとする意識が肝心であるという言葉が学生の心には響いたようです。
また、外務省ロシア交流室長時代の2005年には日露修好150周年記念回航事業で日ロの学生155名がウラジオストク・函館・下田の三港を2週間かけてロシアのチャーター船で周遊した際、函館校の学生が市内観光のボランティア通訳として参加したことも良い思い出と話してくださいました。
終了後の学生の感想では、実際に外交官として活躍された方から話を聞ける機会は貴重で有意義だった、ソ連時代の鉄道旅の話が印象に残った、ロシアで働くためには何が必要か、お話を伺って自分のモチベーションが上がった、などの声が聞かれました。
授業後には会場をロシアセンターに移し、JT社の職員のお二人を囲んで就職懇談会を開催しました。JT社に入るに至った経緯や決め手は何だったのか、といったお話に始まり、自分のやりたいことを社内で実現するためには、自分から企画を提案し、やりたいことと結びつけていくのも一つの戦略だということ、そして色々なことに興味を持ち、柔軟な姿勢で臨むこと、どこで働くにしても日本の歴史や文化についての知識が必要だ、などといったアドヴァイスもいただきました。
現在JT社からは函館校に対する支援として、留学実習および海外インターンシップに対する二つの奨学金制度がありますが、在学中の学生で奨学金を受けた者が一堂に集まり、直接お礼を伝えることもできました。