タマサイの美~アイヌ女性の魂~
函館市北方民族資料館は、世界的に数少ない北方民族資料を収蔵し、その文化を知る上で貴重な博物館である。特にアイヌ民族資料は学術的にも価値の高い資料として、昭和34年、国の重要有形民俗文化財にも指定されている。建物自体も昭和元年に建てられた旧日本銀行函館支店を再利用しており、なるほど、昔函館が栄えていた頃の趣がある。
今回この資料館で開催された、表題の企画展を観た。案内のチラシには“母から娘へと受け継がれたアイヌ伝統の首飾り、その造形や色彩をはじめ魅力あふれるタマサイの美”の言葉と美しい写真があった。
さて、タマサイとは?アイヌの女性の玉飾り-装飾品であり、山丹貿易などで毛皮と交換で中国から得たガラス玉を繋いだものである。ガラス玉は非常に貴重だったため、このタマサイは母から娘へ、そして孫へと受け継がれ、ガラス玉が手に入るたび継ぎ足しては長くしていったものだそうだ。
ペンダントトップとして、中央に大きな飾りがついているものも多い。漆塗りで鶴が描かれていたり、鉄瓶の蓋みたいだったり、やけにジャパネスクだなあ、と思っていると係の方が「これ、何で出来ていると思います?なんと鉄瓶の蓋なんですよ!」と説明してくださった。どうりで。
でもなぜ、鉄瓶の蓋が?と質問したところ、当時のアイヌにとって、日本人がもたらすこれらの物は美しく珍しいものであったらしく、大切に加工し、儀式の時などに身に着けたそうだ。中には和菓子の抜き型などもあった。漆塗りや木製品は丁寧に補強してある。このことからも大事に大事に受け継がれてきたことが窺える。これこそ民族の融合、中国とロシアと日本の出会いである。しかもこれは今流行のリフォームではないか!
また、北海道アイヌと樺太アイヌでは服装も若干違ったようで、タマサイも6連だったり網模様になっていたりと樺太のほうが心持ちゴージャスだ。
残念ながら企画展は終わってしまったが、常設展示でもタマサイは見ることができる。北方民族の美しい衣装や生活ぶりを垣間見ることができるこの資料館に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。