現代ロシア テレビドラマの世界
一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第1回目の講話内容です。
テーマ:「現代ロシア テレビドラマの世界」
講 師:デルカーチ・フョードル(副校長)
皆さんがイメージするような、テレビドラマ=連続テレビドラマがロシアで作られたのは最近の話です。歴史は浅いのです。しかし、もともとロシア人は娯楽映画が好きですから、気軽に見ることのできるテレビドラマはすぐに生活の一部となりました。
今日は、私がおすすめする、ロシアの最近の文化が分かるようなドラマをいくつかご紹介します。インターネットが普及し、世界各国のドラマを見ることができるようになったので、今度のお休みに見る作品の参考にしてください。
1.Реа́льные пацаны́ (2010–) 「本物の男の子」ロシアの地方都市ペルミが舞台のコメディドラマ
主人公はコリャンという青年です。この青年を中心に巻き起こるドタバタコメディなのですが、あまりにも人気でシリーズは2010年に開始してから、今も放送され続けているドラマです。また、地方自治体には文化遺産として公式に認められています。
さて、どんなお話かというと、街のマンホールのふたを盗み、鉄くず買い取り業者に売りに出した罪で執行猶予がついた青年コリャンが、TV番組のリアリティーショーに参加するところから始まります。TV番組のディレクターは彼の人生、仕事、友人を撮影し続けます。執行猶予が付いているので、嘘をついたりすることはできません。ドラマの中のテレビの中で彼は、正直に生きながらコミカルにトラブルを解決していくのです。
https://www.youtube.com/watch?v=QKiNnFehyII
2.Склифосо́вский (2012–)「スクリフォソフキー病院」医療ドラマ
病院を舞台にした群像劇です。中心的人物はブラーキンという男性の医者です。外科医としては優秀ですが、人間的にはちょっと残念な人物です。
例えば、物語の中でブラーキンは研修医の世話係をするよう言われるのですが、面倒だと言って駄々をこねます。もちろん、彼に拒否権は無いのですが、嫌だと言ってその場を立ち去ります。彼がその後受付近くを歩いていると、若い美しい女性に声を掛けられます。女性は「ここで働くことになった」と告げると、ブラーキンはこの女性が研修医だと思い、嬉しくなって、案内します。しかし、そこへ病院ですから急患が運ばれてきます。ブラーキンは、格好良く、女性に手術の助手をするように伝え、二人は急遽手術を行います。見事な手さばきでブラーキンも手術を行いましたが、助手の彼女もとても優秀だったので、ブラーキンは嬉しくてたまりません。「これからも俺のサポートを…」をと言い終わる前に、事務のベテラン女性がやってきて、彼女を見ていうのです。「新しい外科部長!どこに行っていたんですか!?」女性の医師は、ブラーキンの上司になる人でした。そして、追い打ちをかけるようにどう見ても頼りない青年を事務の女性はブラーキンに「研修医です」と紹介したのです。ブラーキンは、天を仰ぐことしかできませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=4LuSvNb3lpA
3.Вампи́ры сре́дней полосы́ (2021–)「田舎のヴァンパイア」 ファンタジー系
ロシアの田舎のヴァンパイアたちという物語です。最近の中ではもっとも有名で、国民のドラマといわれている、人気作品です。
物語は、スモレンスクという街の近くの白樺林で、二人の血を吸われた男性の死体が見つかったところから始まります。死体には、噛まれた痕があり、モスクワの捜査官たちは、野生動物か地元の吸血鬼が犯人ではないかと考えました。この世界線では、吸血鬼も存在しているけれど、ある協定に基づき吸血鬼は人の血を吸わないことになっているのです。さて、本当に事件は吸血鬼が起こしたものなのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=e2u6NPJsKG8
これらのドラマに共通して言えるのは、全て現代の設定です。今のロシアの生活がよく分かる作品ばかりです。国が違うと、当たり前ですが風習が違います。最近私はあまり日本のテレビドラマは見ませんし、もう日本に住んでいて長いのであまりギャップに驚くことはありませんが、皆さんはこれらのドラマを見て、不思議に思うこともあるかもしれません。それも楽しみ方の一つかと思います。YouTubeやネットフリックスなどで楽しんでみてください。