No.83 2015.04"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

函館校での19年

ロシア極東連邦総合大学函館校 教授 アニケーエフ・セルゲイ

私がロシア極東連邦総合大学函館校の教師になってから今年で19年目になりました。どうしてウラジオストクの極東連邦大学の分校である函館校の教師になったかを把握するのに、思い返さなければならないことがあります。
私事で、本当に恐縮ですが、幼い時に戻らなければなりません。日本という国と日本人についてはじめて聞かされたのは母親からで、私がまだ小学校の生徒だったことが記憶に残っています。
母の故郷は、沿海州のやや奥の方にあった小さい村でした。第二次世界大戦後ソビエト軍に抑留された日本軍の兵隊の一部がその村の周辺の収容所に入れられていました。隊には相当の自由行動もあったようで、当時中学生だった母のところに若い日本人兵の一人が時々訪ねたりしたそうです。美少女の母を好きになったらしく「お前を必ず日本へ連れて帰る」と片言ロシア語で言っていたようです。敵の軍隊の一員だったその兵隊は陽気な青年で、村人に親し気で、態度も正しく、よくやさしく笑みを浮かべていたと母は言っていました。その兵隊に教わった日本語の歌を母は歌ってくれました。
私は歌の意味が分からないまま、母が教えてくれた通りに言葉を覚えたのです。
後になって、私がウラジオストクにある極東国立総合大学(当時)の日本語科の学生となった時、その歌は、「ぽっぽっぽ 鳩ぽっぽ豆がほしいか、そらやるぞ。みんなでなかよく食べに来い。」という子供の歌だったことが分かりました。
今考えてみれば、子供の私はこの歌の日本語の響きに心が惹かれ、好奇心が湧いてきて、結局、日本語を職業に選んだのも母親のお陰だったと思います。
ロシア極東大函館校で職を得てから、家族を呼んで、息子たちの思春期も安全で社会秩序の整ったこの国で過ごさせていただいたことに対して、日本人の皆さんに深く感謝します。
うちは5人息子がいる家庭で、4人の子は皆ウラジオストクで大学を終え、しかも3人は、日本、そして日本語に通じているため日本で仕事を得て、自立した生活をしています。
母親から幼い時聞いた日本の夢が叶ったのは、うちの家族を支えてくださった函館校の同僚と日本人の友人のお陰です。
このたび一身上の都合により、退職することになりました。皆さんにはご迷惑をかけどおしで申し訳ない思いでいっぱいです。ときには厳しく、ときには優しく丁寧にご指導いただき、感謝の念にたえません。これからも私の方から仕事場が変わっても日本人の皆様のためにいささかなりとも寄与できるよう頑張りたいと思います。
函館のロシア極東大のさらなる発展と、皆さんのご活躍、ご健康をお祈りします。皆さん、長い間、大変お世話になりました。

人事

事務局が新体制で始動
前述のアニケーエフ・セルゲイ教授のほか、平成22年4月から事務局長を務めてきた伊藤皓嗣さんが3月31日付で退職しました。後任には函館市立神山小学校長だった筑土清彦(つくど きよひこ)さんが着任しています。なお、伊藤さんは学校法人の専務理事として週2回程度勤務する予定ですので、引き続きみなさんと顔を合せます。よろしくお願いいたします。

学務課よりお知らせ

校舎の利用時間
本校の校舎利用時間は平日8:30~17:00です。原則として平日以外は休校のため校舎内立ち入りはできません。利用時間外に校舎を利用したいときは、あらかじめ事務局に申し出てください。


校内掲示板(学生連絡)について
ほぼ毎日、学生への連絡事項を校内掲示板に貼りだします。掲示板は、学生係、教務係、進路・就職、図書室、自治会・サークル活動、事務局の6種類ありますのでそれぞれ確認してください。掲示物を見落としたことにより生じる不都合・不利益について、学校は責任を負いかねます。
掲示物は掲示日より全学生に周知されたものとして、原則1週間で撤去します。


出席率について
期末試験を受けるには各授業80%以上の出席率が必要であり、出席率が低い学生には受験資格が与えられません。
留年を防止するため特に出席率が低い学生の保護者の方には文書で通知しています。


欠席について(7日未満の欠席)
やむをえず授業を欠席するときは事務局で所定の用紙をもらい、必要事項を記入して、欠席する授業を担当する教員に届け出てください。欠席する日があらかじめわかっていれば前日までに届け出てください。当日急に欠席した場合は、翌登校日に届け出てください。
欠席をしたら、放課後の補習時間を利用するなどして早期に授業の遅れを取り戻すことが必要です。欠席が多くなるとそれだけ回復困難になり、授業についていけなくなりますので、普段から体調や生活リズムを整えて、安易に欠席することのないようにしてください。
なお、7日以上の長期欠席、公欠は、事務局学務課へ届け出てください。


補習について
平日の放課後は毎日ロシアセンターで補習を行います。補習担当教員の当番表は教務係掲示板に掲示しています。

論文ガイダンス・学年レポート

学年論文と卒業論文執筆者(3、4年生)を対象とする論文ガイダンスを4月に実施します。論文ガイダンスにおいては「論文ガイドブック」を配布し、論文執筆の取り組み方、またその実際的な問題についての説明を行います。また論文に関する年間スケジュールの確認も行います。
1、2年生(ロシア語科・ロシア地域学科)を対象とする学年レポートのガイダンスは、後期の9月に行います。
いずれの開催日程も掲示にてお知らせします。

JASSO奨学金

在学届の提出について(在学猶予)
本校入学以前に日本学生支援機構奨学金を貸与されていた新入生および前年度で貸与を終了した2,3年生は奨学金返還期限の猶予を申請できます。希望者は4月13日(月)までに事務局学務課に在学届を提出してください。在学届は貸与終了時に交付された「返還のてびき」に所収の様式を使用してください。


進学届の提出について(採用候補者)
大学等奨学生採用候補者は決定通知【進学先提出用】を4月9日(木)までに事務局へ提出してください。入学時特別増額貸与奨学金に係る書類提出の指定があれば一緒に提出してください。書類に不備がなければ学校の識別番号(ユーザIDとパスワード)を交付しますので進学届を4月17日(金)までにインターネットで提出してください。


在学採用募集説明会(貸与希望者)
4月17日(金)16:15から4番教室で奨学金申込の説明と申請書類を配付します。希望する学生は必ず出席してください。この日どうしても出席できない場合は、事前に事務局に申し出てください。

留学説明会

4月21日(火)14:40からロシア語科2年生とロシア地域学科を対象に第1回留学説明会を行います。場所は4番教室です。

図書室より

図書は大切な財産です。図書室を利用できるのは、本校教職員および学生、聴講生のほか、本校教職員の紹介がある方。
開館時間は平日の午前9時から午後4時30分、貸出は同時に5冊が上限です。
一般図書の貸出日数は15日間です。日数、手続きは書物により異なります。貸出・返却は必ず事務局職員を通じて手続きをとってください。貸出が長期に渡る場合は所定の手続きが必要です。

短信

就職支援体制について

本校では、事務局のサポートをはじめ、『ハローワークはこだて』相談員による個別相談会や外部講師による『就職ガイダンス』を定期的に実施しているほか、『ジョブカフェ』主催の訪問セミナーなどを取り入れています。今年度の卒業予定者だけでなく、早い段階から就職活動に向けた準備を始めておきましょう。
また、2-3年生を対象にTOEIC対策特別講座およびТРКИ講座を開催します。積極的に参加しましょう。

△ジョブカフェ北海道主催 平成26年「学生と若手社員の交流会」

TOEIC対策特別講座

TOEICは英語によるコミュニケーション能力を幅広く評価する世界共通のテストです。自分の英語能力を把握できるとともに、企業でも採用・昇進の要件として利用されているものです。9月の公開テストの受験を目指して模試を行い、各自が目標を立て問題点の解決に取り組みます。前期開講のTOEIC対策特別講座の対象は2、3年生です。
開講日程は掲示版にてお知らせします。

ТРКИ講座

ТРКИ(テルキ:外国人のためのロシア語能力検定試験)講座を開講します。ТРКИには、入門、基礎、1級から最高度のネイティブと同じレベルの4級まであり、テストは、語彙・文法、読解、作文、会話、リスニングのパートに分かれています。講座では、基礎と1級レベルの合格を目指します。
なお、ロシア地域学科の学生は、卒業までに2級の合格を目指しましょう。

ビジネスセミナーについて

今年も川重商事元社長 渡辺善行氏による『ビジネスセミナー』を定期的に実施します。「ロシアを取り巻く環境」・「経済問題」など時事も取り上げていきます。科目認定されるため、学生の出席は必須です。

オープンキャンパス・学校見学

今年度のオープンキャンパスは下記の日程で2回行います。

日時:第1回 6月20日(土)午後1時~午後3時30分
   第2回 9月27日(日)午前10時~午後12時30分
学生自治会の事業でもあるため、自治会役員と1年生は全員出席しましょう。

これから本校への入学を検討されている皆様の中で、日程が合わずオープンキャンパスに参加できない方は、学校見学も可能ですので、お気軽にご相談ください。なお希望日時によっては、試験期間など授業見学ができない場合がありますのでご了承ください。
お申し込み、お問い合わせは事務局(電話番号:0138-26-6523)までお願いします

寄稿

ロシア人と日本人は似ているか
本校教授アニケーエフ・セルゲイ

ロシア人と日本人…。まあ、似ているなどというのは、「他人の空似」かも知れませんが、日本もロシアもある意味では文明の辺境にあって、外なる西ヨーロッパと内なるアジアとのせめぎあいに悩むという経験をしてきたのですから、まんざら空似として片付けられない問題を含んでいるのかもしれません。
先の戦争の最後に悲惨な状況があり、ソビエトに抑留された方々、あるいはそこで亡くなった方などもあるけれども、日本人は何となくロシアというものに対して、ある種の親しみとか憧れを持っていると言えるかもしれません。
戦後、一時盛んだったロシア民謡にしても、これが日本人の心にしっくりくるようです。しかし日本は島国で、日本人は割合に気が短い性格だと思われますけれども、 ロシアはああいう大陸で、 ロシア人の性格の特徴の一つは忍耐づよさであると言われるくらいですから、彼らの民謡が日本人の心にぴったりくるということは、よくよく考えれば、不思議なことです。
では、日本人とロシア人は相当に異なっているのに、なぜぴったりくるのでしょうか。そういうことを考えると、いろいろ疑問がわいてくるし、それを簡単に言ってしまえば、みんな錯覚とか誤解じゃないかという気もするのです。しかしながら、そう言ってしまえば身も蓋もないので、何かやはりロシア文学、あるいはロシア民謡というものに対して日本人が共感するものがある、それはどういうものか、ということを考えてみたいと思います。
日本人とロシア人とは、一見して全く異なり、似ても似つかない二つの民族です。それならばなぜ、日本でこれほどロシア民謡が愛され、ドストエフスキー、チェーホフ、トルストイなどのロシア文学が読まれているのでしょうか。なぜロシア人は極東に位置する隣国にこれほど強い興味を抱くのでしょうか。それも両国間関係の歴史は困難なものであったというのに。
お互いに強く魅かれあうのには、何らかの理由があるに違いありません。それはどうやら国民気質の類似点、また両国民の民族的心理状態の特徴に隠されているようです。感情、叙情性、忍耐力、国家権力に対するある意味での消極的態度、柔軟性、集団志向、自身の属する社会の利益を第一に考えるところでしょう。
だがこれらは氷山の一角ともいうべきでしょう。目に見えるものは表面的なものにすぎません。より本質的な類似性は目に見えないところにあります。しかしこれこそが我々二つの国の文化の基礎となっているのです。
そもそも人生のとらえ方が、ある意味でとても似ています。その原点となるのがロシア・日本文化の神話主義的思考で、実際に驚くほど古い信仰が根強く残っています。
また、深い精霊崇拝意識もロシア人および日本人の特徴です。だからこそ日本でも、ロシアでも様々な種類の信仰・宗教の要素が共存しているのでしょう。日本における仏教は、神道の大小の神々、河川・森などの「主(ぬし)」信仰を否定するものではないし、一方ロシアでは古い土着信仰や習慣がキリスト教としっかりと結びつき、独自でロシア独特の色合いが加わっています。 
ところで日本の民族的信仰には「主」だけではなく、それと異なるものの存在、つまり「お化け」の類も含まれます(変化(へんげ)、妖怪、幽霊など)。ですから今でも、日本人は恐い話、要するに「怪談」が好きなのでしょう。
しかしロシアでも「恐い話」は人気があります。19世紀には散文として栄えたこのジャンルは、今日でも健在です。ロシアの民話だけでなく、優れたロシア作家の書いた「純文学」の中にも、レーシー(森の精)、ドモワォイ(家の精)、人魚、水の精、化け物、魔女、海の精、火の精、風の精、キキーモラ(女の姿をした妖怪)など、とにかく超自然的な存在が数多く登場します。これらのうちのいくつかについては、現在も信仰が残っています。
また、古くから伝わるまじない、占い、たたりなどの不思議な力が現在のロシアで、特に最近の10年間で信じられないほど人気を博していることは言うまでもありません。これは、専制国家のコントロールが弱まり、無神論のプロパガンダが空中分解した結果です。これほどまでに明らかな神話主義的特徴が、思考および生活スタイルに影響を及ぼさないはずはありません。ロシア人にしても、日本人にしても然りです。
こうしたことは、特に宗教的な祝い事や伝統的な祭りの中にはっきりと現れています。民族的儀式、習慣、遊び、そして何よりも、現代の信仰にも同じことが言えるのではないでしょうか。

卒業生からの寄稿
「ロシア語との闘い」ロシア地域学科卒 河瀬 愛子

1年生の時、「4年間やっていけるかな?」と不安がありました。終わってみるとアッという間のようであり、やはり長かったようにも思います。学生生活を振り返ると、「ロシア語との闘い」の日々でありました。ロシア語文法を土台として、聞くこと、話すこと、読むことのレベルを上げるために、毎日コツコツと授業に出て宿題をしますが、すぐに成果は出ないので、悶々とした日々が続きました。
また、わたしにとって大切な時期は3年次の秋に行くウラジオストク本学への「留学」でした。見るのも、聞くのも、話すのも、すべてがロシア語で自然にやる気が出ました。聞き取りや会話のレベルを上げるためにも絶好のチャンスでした。また、週3回、個人レッスンをしていただき、体力・能力的にも限界を覚える頃、ちょうど4ヶ月で帰国しました。
入学した頃を思えば、ロシア語もひと山乗り越えることができました。それも、忍耐強く教えて下さった先生方や温かく見守ってくださった事務の方々のお蔭です。また、支え続けてくれた家族や祈ってくれていた教会の方々にも感謝しています。
これから函館校で得たロシア語という武器を用いて、自分のなすべき使命を果たしていきたいと思います。本当にありがとうございました!

卒業生からの寄稿
「二年間を終えて」ロシア語科卒 酒井 星弥

振り返るとあっという間の2年間でした。でもこの2年間の中には今まで経験できなかった経験が詰まっています。
北方四島交流事業では、北方領土の歴史や現状などを学ばせていただき、そこに住んでいるロシア人たちと交流することができました。
本学で日本語を勉強しているロシア人学生がウラジオストクから函館校に留学にやって来て、実際にロシア語を話す機会に恵まれました。年齢の近いロシア人とともに時間を過ごすことができたのが、なによりも貴重な体験となりました。
また、本学から合唱団が来て交流する機会もありました。その人たちは、日本語を学んでいないので、全力でその時点で持っていた自分の力を出してロシア語で会話しなければならず、より実践的な体験となりました。その時、ロシア人の友達ができました。
ウラジオストク本学への留学では、函館で知り合いになったロシア人たちと再会し、買い物や食事を共にしました。それは本当に楽しかったし、嬉しかったです。またロシア語を勉強している日本人や、外国人とも仲良くなることもできたので、一層、僕の世界は広がりました。
このような様々な経験をさせていただき、僕は本当にロシア極東連邦総合大学函館校に感謝しています。
このような経験をするためには、まずロシア語が多少なりともできなくてはなりませんでした。そのロシア語を一から、つまりアルファベットから発音から何から何まで根気強く、精力的に一生懸命教えてくれた先生方がいました。きちんと1人1人を見て名前も覚えて一生懸命に教えていただきました。僕がТРКИ-1(外国人のためのロシア語能力試験1級)に合格することが出来たのも、その他の様々な経験をすることが出来たのも、全て僕にロシア語を教えてくださった先生方のおかげです。心から先生方に感謝しています。
それに加え、入学から卒業までのたくさんの手続きをしてくださった事務の方々、毎日教室をきれいにしていただいている掃除のおばさん方など、陰で支えてくれた方々がいたからこそ、快適にスムーズに学習することができました。本当にありがとうございました。
この2年間は、僕にとってとても大切な人生の一部になりました。これからも母校であるロシア極東連邦総合大学函館校が発展していくことを願っています。2年間お世話になりました。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
1~3月の主な活動実績

○2月11日(水・祝)
当協会が後援するロシア極東大函館校の第17回『はこだてロシアまつり』「春の始まり」が開催されました。極東大の学内行事でもある「マースレニッツア」(冬を追い出し春を呼ぶロシアの伝統行事)をメインイベントに、特製ボルシチなどを楽しめるレストランや雑貨販売のほかロシア語教室、コール八幡坂による合唱などが行われ、多くの市民で賑わいました。
来年度は函館新幹線開業を控え、恒例となった「はこだてグルメサーカス」などが開催される予定ですので、これらを踏まえた事業計画を現在作成中です。会員の皆様には5月開催予定の総会において事業計画をお示しいたします。
新年度も皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

≪係りより≫

今年度も全国から新入生を迎えることができました。新たな仲間と共に日々勉学に励み、楽しく充実した学生生活を始めていただきたいと思います。(倉田)