一隅を照らす。これ国の宝なり
ロシア極東国立総合大学函館校 事務局次長 三浦 祐一
本校に着任間もないころ、「世の中変化しています。その真ん中にいるあなたはとても幸せですね。」というありがたい言葉を、経済同友会の会員で、元バークレイズ・グローバル・インベスターズ代表取締役社長の岡本和久さんからいただきました。
この言葉を頂戴したとき、直感的に感じたことは、これは、私だけに向けられた言葉ではなく、本校そして本校が所在するこの地域にとっての幸せを意味するものだということです。
地球全体を覆い尽くそうとしている市場化の波が、「BRICs」という新興4か国の総称を生みだし、すでに言い古された感はありますが、近年、著しい変貌を遂げたロシアに対しては、今後も市場関係者の熱い視線が注がれることでしょう。
一方、社会の至るところに閉塞感が漂う我が国は、経済発展の側面において成熟段階を迎え、かつてのような成長のスピードは望むべくもありません。GDP(国内総生産)よりGNH(国民総幸福量)が大切とはいっても、GDPが緩やかであっても拡大することによって、GNHは担保されるものだと思うのです。
この緩やかな拡大をいかに実現するか?この点について、福井俊彦前日銀総裁は、「比較的緩やかな経済成長でさえも、人、物、金、情報が自由に国境を越えられるというルールでの知恵比べによって、勝ち取っていかなければなりません。」と語っています。ここに本校の存在価値があるのではないでしょうか。
ドン・コーエンとローレンス・プルサックによる『人と人の「つながり」に投資する企業』ではありませんが、経済活動における人間関係資産・人的資産の重要性は言を待たないことです。まして、それが国境を越えた経済活動であるなら…。
ロシア極東そしてモスクワに繋がっていく重要なチャンネルがこの地にあるのです。
むろんこれまでのロシアビジネスの挫折から、ある種の経験則が形成されてきたことは否定できませんが、それは日本国内に限っても同じことではないでしょうか。
いま揺らいでいるのは「食の安全」ではなく、本質にある「売り手よし、買い手よし、世間よし」というこれまで日本人が大切にしてきた伝統的な価値観が揺らいでいるのです。これもまたGDPの停滞が招いた生き残り競争の悲しい結果なのかも知れません。
この停滞を打破するためには、ボーダーを乗り越え、世界経済の成長を取り込んでいくことも大切なことです。そして、すでにルールでは、“自由に国境を越えられる”ことになっているとすれば、何が欠けているか?
校長先生の言うとおり「勇気」なのでしょう。あるいは「パッション」と言ってもいいと思います。本校に着任からこの間、何人かのロシアビジネスにかかわる卒業生にお会いすることができ、彼らに、このパッションを感じ取ることができました。
本校において学び、人間関係資産の起点となる“自分”という人的資産を築きあげた彼らは、きっと「知識への投資は、常に最高のリターンを生み出す」ということをいままさに実感しつつあるのではないでしょうか。
「君子財を愛す。ただし、これを取るに道あり、これを取るに人あり、事業は万世不朽、得たものを数千万人と利を共にす」というある明治時代実業家の言葉があります。この言葉に込められた「智慧」をも彼らが受け継いでくれたなら、必ずや日本とロシアの関係発展のため、「一隅を照らす。これ国の宝なり」という存在になることでしょう。
留学実習
ロシア地域学科3年生が留学出発
9月18日、ロシア地域学科3年生の7名が3ヶ月間の留学のためウラジオストクへ出発しました。この留学期間中、彼らはロシアを直接肌で体験し、また様々な国や地域からやってきた外国人留学生たちとの交流を通じ大いに刺激を受けることでしょう。実りの多い留学生活となるよう願います。
教務課より
中間試験日程
下記を中間試験期間とします。この期間は通常の時間割どおりに授業が行われますが、科目によって試験を行います。
試験の有無・実施方法は各科目担当教員がお知らせします。
12月1日(月)~12月5日(金)
論文中間報告会日程
ロシア地域学科4年生対象の論文中間報告会を下記の予定で行います。
○後期第2回報告会:10月31日(金) 14:40~
○後期第3回報告会:11月28日(金) 14:40~
学生課より
留学実習説明会開催
ロシア語科1年生を対象に第1回目の留学説明会を行います。日時は11月 27日(木)14時40分からを予定しています。改めて日時場所等を掲示しますので確認してください。
まだパスポートを持っていない学生は、取得しておく必要があります。函館でパスポートを申請する場合は、渡島支庁(函館市美原4丁目6番16号 ℡47―9000)で手続きをしてください。申請用紙は事務局にもありますので利用してください。
ТРКИ受験案内
今年もロシア連邦教育科学省認定 「外国人のためのロシア語能力検定試験 (略称=ТРКИ)」を実施します。
ТРКИとは、ロシア語を学んでいる外国人のロシア語能力(ロシア語コミュニケーション能力)を証明するものです。
日本国内における受験は、2000年度にロシア極東国立総合大学函館校において初めて可能となりました。
今年度の試験日は12月6日(土)、7(日)、試験会場はロシア極東国立総合大学函館校で、基礎テスト、1級、2級の試験を実施します。ロシア語を学習されている方であれば学外の方も受験できます。
実施要項と願書の配布は、函館校在校生には学校事務局にて行います。学外の方は下記までお電話いただくか、学校ホームページからご請求ください。
ロシア極東国立総合大学函館校事務局
ロシア語能力検定試験係
電話:0138-26-6523
http://www.fesu.ac.jp/
冬季休業
冬季休業は、12月8日(月)から 1月9日(金)までです。この期間、平日は事務局や図書室などの利用は可能ですが、12月29日(月)から1月5日(月)まで事務局は休業となりますので、校舎内への立ち入りはできません。
授業開始は、1月12日(月)が成人の日で祝日のため、1月13日(火)からとなります。
お知らせ
今年も留学生がやって来ます
本学付属東洋学大学日本学部から5名の学生が日本語と日本文化を学ぶために函館校に留学します。日程は10月20日(月)函館に到着、翌日から約4週間にわたり函館校で授業、11月15日(土)に函館を離れます。
積極的に交流しましょう。
≪留学生(すべて4年生)≫
ボイコワ・ヴィクトリヤ
ポリカルポワ・アンナ
リジコワ・ヴィクトリヤ
ステパノワ・ナデージダ
フスヌートディノワ・スベトラーナ
学生からの投稿
北方四島交流訪問事業に参加して
ロシア語科2年 白山 季絵
今回、私は北方四島返還要求運動関係者の後継者の一員として、また、択捉島訪問団の一員として参加する機会を得ました。
私は、以前『日ロ交流と北方領土を考える集い』に参加した時、ビザなし交流に参加した方が「北方領土には日本の面影は何一つない。」と話されるのを聞いて、北方四島の現状はどうなっているのか、また、そこに住むロシア人は領土問題のことをどう思っているのか気になっていました。
今回のビザなし交流は9月11日から15日までで、実際に択捉島に上陸したのは2日間だけでした。というのも、択捉島までは船で約11時間もかかるのです。私は長時間船に乗ったことがなかったので色んな意味で楽しみでした。
12日の朝、激しい雨に見送られながら根室港を出港し、その日は一日中船の上で過ごしました。択捉島に向かう途中、国後水道という海峡があるのですが、その場所を通る際の揺れはひどく、訪問団員のほとんどが船酔いになりました。
13日、14日は択捉島での景勝地見学、市内散策、日本人墓地のお参り、ホームビジットや対話集会が行われました。
対話集会では環境問題を話し合ったり、領土問題について訪問団員が意見を述べたりしました。なかなか思うような意見がロシア人側からもらえず残念ではあったのですが、ロシア人側が先住民族はアイヌ民族だということを認めたということは大きな成果だと思いました。
15日、根室港に帰港し解団しました。
今回参加させていただいて、改めて北方領土問題を深く考えるようになりました。
そして、この交流を続けることによって日ロ間の相互理解を深め、近い将来にこの問題が解決されることを願い、これからの将来に私自身も何らかの形で協力できたらと思っています。またこのような事業に再び参加する機会を得た時には、ロシア語を知っている者としてロシア人と日本人との交流の手助けし、相互理解の手助けができたらと思っています。
この場を借りて、このような機会を与えてくださった北方四島交流北海道推進委員会の方々、本校の関係者の方々に感謝申し上げます。
役者小屋観光ガイドに参加して
ロシア語科1年 芹沢 寛人
先頃、「第10回青少年サハリン・北海道『体験・友情』の船」事業の一環で、サハリンのロシア人大学生8名が当校を訪れました。
私は、訳者小屋という学生サークルに所属しています。サークルではロシア語の物語を日本語に翻訳したり、ロシア語通訳ガイドとして観光案内を行ったりしています。今回のロシア人大学生の訪問団にも私は訳者小屋の部員として函館市の観光施設をロシア語で案内しました。その際、今年7月に交流したウラジオストクからの観光大学生とは違い、彼らからは日本人と同じような島国・港町気質が感じられました。
函館にはたくさんのキリスト教関連の教会があり、それらを案内したのですが、ハリストス正教会に入るや否や彼らは荘厳な表情になり、その表情たるや神秘的にさえ思えました。私は、ロシア人の先生からの「そんなときは笑ってはいけない」との訓えを守り、できるだけ真面目で荘厳な表情でいるよう努力しました。それを知ってか知らずか、彼らはお祈りを済ませた後、私に向って非常に嬉しそうにスパシーバと声をかけてくれました。
カトリックの教会に入る時、彼らは立ち止まり、一瞬顔が強張ったかのように見えました。ロシア史の授業で習ったとおり、カトリックとロシア正教の間には、我々には想像もつかない距離があるのだと実感しました。我々日本人にとっては、十字架に2つ横棒が付いているかいないかの違いにすぎないのですが。
東本願寺函館別院では、御堂を見学しました。そのなんとも言えない荘厳な雰囲気にロシア人たちは圧倒されているように見えました。それはそうでしょう。サハリンにはきっと仏教のお寺なんて、ないのでしょうから。
ロシア人の男子学生は大きい車に関心を寄せ、よく立ち止まっては写真を撮ったり、眺めたりしていました。女子学生はコンビニの品数の豊富さに満足していたようで、たくさんお菓子や役に立つ小物を買い漁っていました。
総合的に私が実感したこと、それはまだロシア人と日本人には大きな違いがあるということです。その多くが国民性によるものでしょう。「力は正義、正義は力」。現代のロシア人はそれをむき出しにしないまでも、根底にはそれがあるように見受けられます。しかしながら、ロシアと日本が一歩一歩近くなっていることは事実であり、2,30年後には価値観の共有ができていることでしょう。
函館日ロ親善協会からのお知らせ
7~9月の主な活動実績
○ 7月2日(水)
G8サミットの取材のため来道したモスクワテレビが函館に立ち寄り、倉崎会長が取材を受けました。
○ 7月19日(土)
当協会後援の『2008はこだてロシアまつリ』が開催されました。天候にも恵まれ、会員の皆様をはじめ多くの来場者で賑わい大成功のうちに幕を閉じました。
○ 8月21日(木)
日本経団連会員企業28社の執行役員の皆様が極東大函館校を視察し、これに引き続き、開催された昼食懇談会に倉崎会長が出席しました。
○9月12日(金)
㈳北方圏センターとの共催による『サハリン芸術交流団函館公演 ロシア民謡と踊りの夕べ』が金森ホールで開催されました。
※ 会員皆様のご協力のお陰をもちましてチケットは完売。公演の最後には、「観客の皆さんもステージに登壇してください」というサプライズ。一緒に写真を撮るなど大いに盛り上がりました。また、公演終了後の交流会では、交流団から当協会に対し、ホフロマ塗りの大皿をいただき、今後、極東大函館校の図書室に展示する予定です。
10月5日(日)『第4回地球まつり』が函館市国際交流プラザと極東大函館校の各教室を使って開催されます。「世界の料理 グルメdeランチ」のコーナーには、ピロシキも登場。もちろん、当協会も展示ブースを開設します。ぜひご来場ください。
≪係りより≫
『ミリオン・ズビョースト57号』をお届けします。次号58号は、1月6日発行を予定しています。ご期待下さい。(小笠原)