極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

元気娘のウラジオ便り 卒業編

 10月18日、修士論文の公開審査が終了し、23日に卒業証書授与式でディプロンを受け取り、私寺越、晴れて卒業しました!!
 思えば長い道のりだった。何度荷造りしかけたことでしょう。何度寮内カフェサトコに愚痴を言いに行ったでしょう。サトちゃん、ごめんねえ。
 そういうわけで今回は、公開審査と授与式の模様をお伝えしたいと思います。
 まず公開審査ですが、時間をかけまくって書いた論文を手に、お偉いさん方数名の前で10分ほどで内容と結論を発表します。そして質疑応答となるわけですが……。
 何人かは審査の席に着くまで論文の表紙すら見てなかったらしく、「この子、何書いたんだっけ?」と、タイトルをその場で聞いてきた・・・やる気ないなあ。
 何はともあれ質疑応答にも自分の得意な分野の話ばかりでとっても楽しく受け答え。途中から余裕ぶっかまして笑顔にまでなっていました。しかし!!6・7問答えたときでしょうか。やっちゃったんです。「先制攻撃」と話すところを、「コンドーム攻撃」と・・・ほら、音が似てるじゃないですか。舌がもつれて、ついつい出たんです。イヤラシイおなごではないのです・・・テロリズムでどんな攻撃するんだろう・・・
 この発言のせいかどうかは分かりませんが、審査では最高点を頂き、無事に終了。
 いやっほう。どういう評価基準かは知りませんが結果よければすべてよし。
 23日は大学の創立記念日と兼ねて結構盛大な授与式になりました。いろんな表彰を兼ねていて、いろんな人が舞台にぞろぞろと並んで結構うんざり。
 そしてその合間に何処かの偉い人のスピーチと極東大学専属ダンサーズがここぞとばかり自分たちの才能を発揮してプロ顔負けのダンスと歌を披露。何でも彼ら、こういうときのために編成されている特別な学生らしく、授業にはほとんど出ないでレッスンをしているそうな。成果はしっかり現れてまして、筋肉の美しさは本当に惚れ惚れするくらいのものでした。
 ところで面白いのは舞台の周りのいたるところにあるフラッグ、ЕДИНАЯ РОССИЯの目標がずらずらと書かれているのですがそのうちのひとつに мы сохраняем цивилизацию РФ と書いてあり、大うけ。これ、ロシア連邦の文明を維持しますって言う意味なんですけど、10月末になってもまだお湯や水が出てない地域あり、暖房もついてなくて最近やたら停電するという環境で、文明を維持されても・・・できればさらに上を目指して欲しい・・・
 そうやってダンサーの筋肉に見とれて涎を垂らしながらフラッグに笑っているうちにやっと授与の順番が回ってきて、この時期の卒業生は普通いないため、私一人が舞台に立ちクリーロフ学長からディプロンを受け取ることに。サトコに着付けをしてもらった着物姿で、初の日本人修士課程修了者として壇上でディプロンを受け取りました。
 最初はさぞ緊張するだろうと思っていたのですが、何のスピーチもしないでいいと事前に言われていたため思った以上に落着いて壇上から観衆を眺めることができました。
 学部長や自分の論文担当教授の姿が眼に入り、彼らが今年の秋まで私の卒業をまったく信じなかったことを思い出して、したり顔。
 語学学校に通っててその日は私の姿を見るために最後まで授与式に残ってくれた日本人の方を見て、彼らがいつもいつも気遣ってくれたことを思い出して、笑顔。
 そして自分も「成績優秀者」の一人として受賞するために隣の席に座っていて、私の舞台での写真を撮ってくれたマーシャを見て、彼女の思いが伝わり、胸が熱くなりました。
 入学当時、専門の違いから学部の単位がまったく足りなかった私は最初の一年で5年分の単位をとらなくてはならず、2つの学年の授業を一気に通っていました。言葉も分からず、専門知識もなく、なによりも自分が何者かいまいち分からないため不安で、何のとりえもないアジア人に対して冷たい反応ばかり見せてくるロシア人の前でいつもおどおどしていた私に、最初に近づいてきてくれた子が彼女。本当に勉強家で、自分の勉強のためにですら時間が足りないのに、私の尋常でないレポートや試験勉強の量に同情し、いつも手伝ってくれて。理解できない理論やテーマがあると、分かるまでずっと説明してくれて、励ましてくれたのが彼女です。彼女がいなければとうの昔に帰国してました。
 ほかにも18日の公開審査から今日にかけて、いろんな人が祝福の電話をくれたり、電話したら本当に喜んでくれたり。その人たち、一人ひとりが私にとって本当に必要な人で、その人たちがいたからディプロンを手にすることができました。「一人だ」と感じたこともあったけど、本当はこんなにたくさん支えられてきたのだと実感。家族や友達はもちろんのこと、卒業してまでもずっと面倒を見てくれた函館校の方々や、仕事の任期を終えてもずっと付き合いを続けてくれたバイト、派遣先のみなさんに、そしてそのほか日本人、ロシア人でずっと卒業を信じて応援してくれた方々にこの場を借りてお礼を言いたいです。本当に本当にありがとうございました。
 こうして晴れて第一号の修士外国人となったわけですが、これが次に修士を目指す外国人にとって少しでも可能性が広がるための新たな道筋になれば幸いです。
 長い間ご愛読ありがとうございました。

極東国立総合大学附属国際関係大学政治科学・社会経営学部

6年  寺 越 弓 恵