ある詩人の生涯
一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第6回目の講話内容です。
テーマ:「ある詩人の生涯」
講 師:鳥飼やよい(本校准教授)
ブーラット・シャルボービッチ・オクジャワ(Булат Шалвович Окуджава 1924年5月9日-1997年6月12日)は、ソビエト・ロシアの歌手、詩人であり、作曲家、作家、シナリオライターでもあります。60年から80年代を中心に約200曲の自作の歌を歌い、ソビエトにおけるシンガーソングライター(Бард = バルド)の先駆けとなります。全ロシアでその歌を知らぬ人のないほどの大きな人気を得て、ロシアを代表する歌手となりました。
オクジャワはグルジア人の父とアルメニア人の母の間にモスクワで生まれました。父親はスターリンに銃殺され、さらに母親も収容所に入れられたため、幼少時代はグルジアの祖母の下で過ごしました。17歳で志願兵として戦場へ赴きますが、負傷のためグルジアの首都トビリシに復員し、それから大学を終えて小学校の教員となります。
教職につくかたわら、もともと詩作に関心があった彼は、自分の詩にメロディをつけ友人たちの集まりで自作自演をしていたところ、評判が口コミで広がり、徐々に全国にその名が知れ渡っていったのです。
「バルド」とは、中世の宮廷や貴族に雇われた職業的詩人または吟遊詩人のことです。オクジャワは政治や思想とは関係のないソビエトの人々の生身の生活の実感を歌い、歌手でありながら特に歌詞を大事にしました。そのため、シンガーソングライターではなく「バルド」の呼び名を与えられ、続いて現れた世代の歌手たちの演奏スタイルにも大きな影響を与えました。
シンプルなメロディに言葉をたっぷりとのせて歌うオクジャワの歌には、何ともいえない暖か味と人間臭さがあります。しかし本人は、歌は下手で楽譜も読めないとして、「自分は歌手ではなく詩人である」と言っています。このせいか、彼の歌を聞いた多くの人々が自分にも歌えるのではないか、とギターをとり歌い始めたのでした。このことも、オクジャワの歌が多くの人々に歌い聞かれていった理由の一つでした。
日本の山之内重美さんもオクジャワの歌を歌っていますので、CDで聞き比べてみましょう。山之内さんの訳詩は、彼女自身が行っています。
* 講話では、実際に歌うオクジャワの姿をYouTubeで観ながら、1曲ずつ解説しました。
<今日のひとことロシア語>
Хорошо сидим!(ハラショー シディム=いい集まりだね!(楽しいね!))