ウラジオストク訪問記 4
間が空きましたが、続けます。
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<4日目>
朝、ホテルの周りを散歩してみる。最近は24時間営業のスーパーも増え、日本のお菓子やカップラーメン、インスタントみそ汁、洗剤から芳香剤まで、少々値は張るが買うことはできる。しかし、せっかくロシアにいるのだから、ロシアのものを買いたい。
ホテルのレストランにも飽きてしまったので、魚とお米のピロシキとケフィール(ロシアの飲むヨーグルト)を買い、今日の朝食とした。ケフィールはイチゴ味やバナナ味などもあるが、プレーンな物を買った。日本ではピロシキの中身といえば肉と決まっているが、ロシアではジャガイモ、キャベツ、リンゴ、けしの実など様々選べるので、楽しい。ピロシキは“ロシアのおにぎり”みたいな存在だ。
この日は、10時にホテルを出発して、昨年完成したばかりの極東大学附属図書館へ向かう。2008年、プーチン首相を招いて完成披露をしたという、極東大学の敷地内でも一際立派な6階建ての建物だ。女性の司書が内部を案内してくれた。美しいステンドグラスで飾られたホールがあり、玄関にはクロークも用意されていた。アムール湾に面しており、眺めが素晴らしい。
日本をはじめ、中国や韓国の書籍が置いてあるコーナーに来たとき、通訳のアンナは「ここのカウンターで私はアルバイトをしています」と言った。授業が終わると、ここへ来て仕事をしているそうだ。ロシアの大学生は、高学年になると将来の仕事に近いアルバイトをよくする。そのままその会社に就職することも多い。だから日本の感覚でいうアルバイトよりは、インターンシップに近いのかもしれない。アンナのお母さんも、極東大学の図書館で働いていたのだそうだ。
図書館から出て、隣の韓国語学部の建物を見学する。韓国の偉い先生が寄付をして建てられたものだそうで、東洋学大学とは別の、独立した建物なのだ。ロシア人の学生たちが、口々に「アニョハセヨー、アニョハセヨー」と挨拶をしてくれるが、どうにも答えようがない。外国人を見ると、すべてアメリカ人だと思い、英語で話しかける日本人と同じだ。函館校のロシア人の先生方は、それをいつも怒っている。むしろ日本語で話しかけてくれたほうがいいのに、と。私もそう思う。今の場合、韓国語ではなく、むしろロシア語のほうがいいのに。
それからクリーロフ学長を表敬訪問するため、車で極東大学本部へ移動する。学長室で30分の懇談の後、極東大学の所有する船でルースキー島を洋上視察に行く。ルースキー島は、夏になるとウラジオ市民がキャンプに訪れる場所で、アーニャもよく行くという。ルースキー島に近づくにつれ、建設中の建物が見えてくる。APECのために作られる施設は、本当に間に合うのだろうか。またしても心配になるが、多分大丈夫なのだろう。
船の中で、極東大学主催の歓迎昼食会が行われる。寮の料理人が一人で作るというロシア料理はとても豪華で、どこのレストランよりもおいしい。前菜、キノコのピロシキ、山盛りのフルーツ、ロシア式にテーブルの余白が見えないほど、たくさんのお皿が並んでいる。その後もメインのサーモンステーキや、デザートなどなど、次々と運ばれてくる。ここでも附属観光大学の学生がサービスしてくれた。たくさんご馳走になり、料理がストップした頃、ちょうど船が港に戻った。3時間ほどの快適なクルーズだった。
一旦ホテルに戻り、夕方出かけるまで少し間があったので、またしてもホテル周辺を散歩しに出かけた。路上でおばあちゃんたちが木の実や自家製のピクルスなどを売っている。そんな様子を見ているだけでも楽しい。せっかくロシアにいるのだから、部屋にこもっていてはもったいない。ロシアは“黄金の秋”、公園の枯れ木も美しい。
すると、すれ違うおばあちゃんに声を掛けられた。時間を教えてくれという。がんばって、ロシア語で答えるが、通じない。そこで腕時計の文字盤を見せたところ、「目が悪いからそんな小さな時計は見えない。」と言う。「ごめんなさい。」とあやまると、「いいのよ、あなたはロシア人じゃないものね。」と言って去っていった。そんなやりとりも、ちょっと悔しいがやっぱり楽しい。
ホテルの玄関に集合し、ウラジオストク日本国総領事主催の歓迎レセプションのため、総領事公邸に向かう。公邸は市の中心部から少し離れた、空港に近いところにある。昨日の渋滞ですっかり懲りた私たちは、街中を早めに脱出する。おかげで早く着いてしまったので、周辺を散策して時間をつぶす。このあたりは外交官の公邸などが立ち並ぶ一等地で、各家の塀も高い。警備が厳しいのだ。同行者が、以前ここに来た記憶があるという。少し歩くと旧ソ連共産党のゲストハウスがあり、たしかにここに、1990年のソ連時代泊まったというのだからすごい!
総領事主催の歓迎レセプションには、ウラジオストク市役所や議会、アルチョム市からも関係者が招かれていた。アルチョムはウラジオストク空港がある市だが、いずれウラジオ市と合併することが決まっているという。
ここで、久しぶりに日本食を食べることができた。昨日お米が食べたくて中華料理店に行ったわが一行は大変喜んだ。天ぷら、ちらし寿司、筑前煮、おそば、日本で食べるのと変わらない、おいしい日本料理だった。
公邸から戻り、就寝。明日はもう、ウラジオストクを離れなければいけない。(つづく)