ロシアの引越し祝い、ノボセリエ
先日、アニケーエフ副校長が引越しをし、ノボセリエ(новоселье)にお呼ばれしました。これはロシア式引越し祝いのことで、新居に友人や親類を招いてもてなすことを意味します。
この夜は函館ハリストス正教会のニコライ神父も招待されていたため、成聖式が執り行われ、新しい住まいの安全と家族の幸福をみんなで祈りました。神父がリビングの東側に小さなイコンを置き、聖歌を唱え、聖水を部屋中に振り掛けて清めます。ロシア人たちは「ここで十字を切る」、といったタイミングがわかっていますが、作法のわからない我々日本人は、ただただ神妙な面持ちでじっとしていました。
静寂な時が終わると、あとはにぎやかなパーティーです。この日集まった約20名がリビングの一つのテーブルにぎゅうぎゅうに座ります。その家の主(男性はハジャイン:хозяин、女性はハジャイカ:хозяйка)は人数分のお料理を用意するのに朝から大忙しです。例えば、この日テーブルに並んだお料理はヴィネグレット(スビョークラのサラダ)やガルプツィ(ロシア風ロールキャベツ)、ロシアのイクラ缶詰とパン等々。
おばあちゃんが作った3つの鍋いっぱいのガルプツィは、大きく細長くて食べ応えがあり、日本の食材で作ったのにどうしてこんな味が!と不思議に思えるほど、ロシアの味でした。おばあちゃんにそのことを伝えると、「それは思いが味に出ているから」とにっこり。恐るべし、おばあちゃんの魔法の手。
招かれた方は好きな飲み物を持ってくるように、とのハジャインの指示だったので、ワインやウォッカ、日本酒など思い思いの飲み物がテーブルに並びました。そして、いつものように乾杯、少し飲んでおしゃべりをしては、また誰かが立ち上がり、乾杯。
ハジャインにとって準備は大変でも、こうして多くの友人や家族とともにお祝いできるのは、とても幸せなこと。幸せなハジャインは、この夜一番先につぶれてしまいました。