ロシア正教の聖歌
一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第3回目の担当は、イリイナ・タチヤーナ准教授でしたが、イリイナ先生の発案で、函館ハリストス正教会見学のあと、教会の山崎瞳さんからお話を伺いました。大学からハリストス正教会までは歩いて3分ほどの距離です。
山崎さんは、ソ連時代にレニングラード神学校の聖歌隊指揮科で学んだ専門家で、現在は函館ハリストス正教会で日々の指導を行うほか、日本各地で開催される正教会の研修会で講師を務めておられます。
はじめに、聖堂の中で山崎さんから教会の方位や聖歌隊の配置について説明を受けました。その後、敷地内にある信徒会館に移動し、ゆっくりとお話を伺いました。以下は、そのお話の内容をまとめたものです。
テーマ:「ロシア正教の聖歌」
講 師:函館ハリストス正教会 山 崎 瞳
正教会の聖歌はソプラノ・アルト・テノール・バスの混声4部からなっています。カトリックなどと違い、オルガンや楽器の伴奏がありません。それは呼吸の通わない金属や木ではなく、人の声で神を賛美するためです。
また、他教会の鐘は一つだけなのに対し、正教会の鐘は多いというのが特徴です。函館の教会の鐘は5つで、日本の中でも大きい方です。正教会では鐘まで調律しています。
鐘は時報ではありません。ですから決まった時間に鳴らすというものではなく、結婚式のとき、お葬式のとき、これからお祈りが始まるというしるしに鳴らします。
鐘は定められた場所で鳴らすことが重要です。例えば畑で農作業中の人々や、病人を看病している看護婦さんなど、仕事中で教会に来ることができない人々にも、お祈りが始まることを知らせて、それぞれがその場でお祈りをするのです。
聖堂でお祈りをする際に焚く乳香の香炉には鈴がついています。これは意識をまとめるためのもので、これを鳴らすことにより、神様の方へ向かう気持ちになります。
ロシア人の高い音楽性が聖歌にも反映されています。ロシア人は聴いただけで、それがどの地域の聖歌かわかります。聖歌には祈りの言葉が緻密に織りなされており、それが荘厳な祈りにつながっています。
ロシア正教会の歴史は988年に始まるとされています。1860年、ゴシケーヴィチが初代の在日ロシア領事として函館に赴任し、その翌年の1861年、日本の亜使徒大主教聖ニコライ(ニコライ堂で有名なニコライ・カサートキン)が函館で布教を始めています。二人ともサンクトペテルブルク神学校を卒業しており、日本の聖歌はペテルブルクの伝統を引き継いでいます。
神使(=天使)の声を具現化するのが聖歌隊の役割です。肉体の耳で聞くのではなく、スピリットが大切です。先ほどご案内した聖堂には譜面台が4つしかありませんでした。それぞれが楽譜を持つのではなく、各パートが一つの楽譜をみんなで見ることにより、心が合わさった美しい聖歌になるのです。
*函館ハリストス正教会で、聖歌コンサートが開催されます。スラブ語聖歌や日本語の聖歌など、本物に触れる絶好の機会です。
詳細は教会へお問い合わせください。
日時:8月20日(金) 開場18:00 開演18:30
場所:函館ハリストス正教会 信徒会館
函館市元町3-13 ℡0138-23-7387
入場:無料ですが、座席に限りがありますので、お早めに。