北海道しらかばラムネ
白樺(берёза:ベリョーザ)はロシアで最も愛されている木。函館校で市民向けに開催しているロシア文化講座、「はこだてベリョースカ(берёзка:白樺の若木)クラブ」は、白樺のように親しまれる講座になるように、との願いを込めて名づけられたものです。
白樺はまた、古くから習俗やロシア正教会の儀式の中で使用されるなど、重要な役割を果たしてきました。ロシア人は白樺を特別な力が備わったものと考えていたのです。
ベレスタ(бреста)という白樺の皮でできた小箱や櫛、髪飾りなどは、精巧な細工が施され、軽くて柔らかい手触りを特徴とする、シベリア特産の工芸品です。白樺には自然の防腐・殺菌作用があるため、食料品の保存や薬箱としても重宝されていました。ガムでおなじみのキシリトールは白樺から採れる甘味料。そのほか、抗酸化作用や保湿効果もあるため、最近では化粧品にも白樺エキスが配合されるなど、注目を集めています。
でも、白樺の一番の楽しみ方はその樹液(берёзовый сок)を飲むこと。雪解けが始まるとロシア人は森に入り、白樺の幹に小さな穴を開け、ストローを差し込んで樹液を吸います。春を目の前に、大地の養分をぐんぐんと吸った白樺の木は、樹液を豊潤に蓄えています。樹液といっても水のようにさらさらで、そのまま飲むことができるのです。ロシア人はこの白樺樹液が大好きです。無色透明でほのかに甘く、くせがない柔らかな口当たり。白樺の恩恵に与ったら、今度はその穴から虫が入り込まないように、松脂などできちんと蓋をします。
残念なことに、貴重な樹液は雪解けからのほんの4週間ほどしか採取できません。芽が吹く季節になると、樹液はぴたりと流れ出るのをやめてしまうのです。樹液自体も時間が経つとすぐに味が変わってしまうほどデリケートなので、保存するのも難しい、だからこそロシア人は厳しい冬を越え、春の訪れを待ちわびて森に入るのです。この習慣はアイヌや他の北方民族にもあるようです。
北海道でも最近では白樺樹液を製品化し、販売しているところがあります。函館の隣町、七飯町にはこの白樺樹液を10%配合した「北海道しらかばラムネ」を作っている工場があります。コアップ・ガラナで有名な株式会社小原さんが、今年はじめて、道内限定で3万本生産したもので、空港や道の駅などの土産物屋でしか手に入れることが出来ません。
このラムネを今年のロシアまつりで販売できることになりました。暑い夏、北海道の青空の下でさわやかにラムネをあおる姿を想像してみてください。少しでもロシアの風を感じませんか?