極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

工事現場ではハングルが

町の至る所で工事が行われている。主に道路工事と建物の外装工事。

道にパネル状の敷石を並べたり、切ったりしているのはロシア人ではない。現場で指示しているのも普通はロシア人ではない。外装工事の為に足場を組んでいるのはロシア人ではない。外壁の古いタイルを剥がしているのも、下でヘルメットをかぶって指示しているのもロシア人ではない。第一、作業員はヘルメットも安全ベルトもしていない。

ロシア人はどこに居るのか。時々、ネクタイ、背広姿の人がやってきて、迷彩服を着た現場監督らしき人と何やら話をしている。いました、ロシア人。トラックで資材を運んで来る人、ロシア人。ユンボの上に居る人、ロシア人。現場では何かそれなりの資格を生かして働いているか、役人か、ともかくあまり危険でない所に身を置いている人、それがロシア人。
後で知ったことだが、韓国からの留学生は工事現場の人と話をしないとの由。北の人と話すのは危険らしい。

ロシア人はいわゆる“3K”の現場にはあまりいないようだ。資源を売ったお金で、外国人を雇い、外国の製品を買って暮らす生活習慣を身に付けたらしい。はて、この国でいわゆる製造業は育つのだろうか。スーパーに並んでいる商品は中国製、韓国製、日本製が多い。街で見かける車は、ほとんどが日本製と韓国製と、たまにドイツ製。ウラジオストクに自前の自動車工場ができたらしいが、それはどこを走っているのだろう。自国の製品を買わせることまでは強制はできまい。
市民はしたたかに生活している。特に女性は身を美しく見せることに多くの神経を使い、デコボコ道でもかかんにハイヒールで闊歩している。他人に合わせようなどとは考えていないらしく、美しく自己を表現している。実に魅力的だ。
一ヶ月の間に、工事現場のハングルと女性のハイヒールの音は、私には、あまり違和感なく響き始めた。

ロシア極東連邦総合大学函館校 ロシア語科2年 畠山 重人