昨年、ロシアで起こったこと
一般向け文化講座「はこだてベリョースカクラブ」の今年度第7回目(最終回)の講話内容です。
テーマ:「昨年、ロシアで起こったこと」
講 師:イリイン・セルゲイ(本校校長)
ロシアでは、昨年はあまり変化がありませんでした。金融不安はなくなりました。
昨年は干害が大きく、西部の方の農業に大きな損害をもたらしました。ロシアが小麦を輸出しない代わりに、今はブラジルやアメリカが輸出しています。
食料品の値段は上がっています。小麦・ライ麦の価格が高く、家畜のエサ代が上がり、結果として肉が高くなります。ロシア人はソバの実をよく食べますが、値段は4倍となりました。しかし給料は上がらないので、生活が苦しくなりました。インフレ率は7%アップの予測ですが、もっと上がるかもしれません。経済成長はプラス4%の予測ですが、今年はどうなるかわかりません。
政府は年金を6~7%上げようとしています。ロシアを助けるのは、石油価格の上昇です。エジプトの革命、アルジェリア、チュニジアの混乱は、悪いことですが、ロシアにとっては助けになっています。ですから、生活水準は上がるかもしれません。
メドヴェージェフ政権は強くなりました。来年は大統領選挙がありますが、メドヴェージェフとプーチンは、どちらも出馬するでしょう。私個人の意見では、例えばプーチン大統領でメドヴェージェフ首相となっても、政権全体としては変わらないと思います。日本は首相が毎年代わりますが、安定した政権のほうがよい。先日のラヴロフ・前原の外相会談は失敗に終わりました。政権がしょっちゅう変わるから会議をする意味はない。もちろんマイナスの点、プラスの点はありますが、小泉内閣は変わらないという意味で、今よりいい内閣だったのではないかと思います。
ロシアにとっては、昔から二つの問題があります。一つは汚職です。国の仕事は入札が必要ですが、公務員は便宜を図り、5~7%の利益を得ています。政府は反対運動をしていますが、これは大きな問題です。ソビエト時代は相手はすべて国でしたが、今は民間だから問題になります。
二つ目は警察です。今、改革が行われています。милиция(ミリツィア)からполиция(ポリツィア)に改名しました。改名にあまり意味はありませんが、意味があるのは仕組みを変えることです。問題解決には賄賂が必要ですが、国民はみな怒っています。ロシアの国は発展を続けているのに、国内は変わらない。一番危険なのは政権が変わることです。安定した国であることが一番大事だと思います。
日本とロシアの関係が悪いと言われますが、それはお互いのせいです。鳩山政権の時、新聞は、北方領土問題は解決すると書きました。しかし、すぐ菅政権に代わって、それは失敗しました。日本は弱くなりました。ロシアにとって日本はもう、大事なパートナーではない。日本はG8ですが、ロシアにとって一番大事なのは中国です。
政治的分野では両国の関係は変わりませんが、私たちの活動分野である教育・文化面は非常に大切です。これからの若者が世の中を変えます。私たちの仕事は政治より大事な、人を育てることです。自国の文化、相手の文化を知り、相互理解を深める。そういう人材を育てることが必要だと思います。
*はこだてベリョースカクラブでは平成23年度の受講生を募集しています。
詳しくはこちらをご覧下さい。