2017ウラジオストクの旅 4
*少し間が空きましたが、続けます。
<3日目>
日曜日、この日は極東大学日本学科の学生で、2016年にロシア極東大学留学生支援実行委員会の招へいプログラムで函館校に留学していたスルタノワ・リュバーワ(リューバ)さんが街を案内してくれた。ちょうど夏休み中でカフカス地方から遊びに来ていた従妹のディーナも一緒であった。ディーナはまだ16歳で、日本語はまったくわからないそうだが、タクシーを呼んだり、チケットを買う手伝いをしてくれたり、何かと世話を焼いてくれた。
午前中はホテルから徒歩3分のところにある、アルセーニエフ記念沿海地方博物館を見学した。10年前に訪れた時とは随分印象が違う。以前はアムールトラや鷲のはく製、石などが展示されたカビ臭い、博物館らしいイメージだったが、今は歴史的資料というよりも“見せる展示”の度合いが高くなった気がする。
コーナーごとにテーマがあり、北方民族の生活やソ連時代の赤十字活動の展示など博物資料はもちろんだが、3階では“ペルミの神像”という木造彫刻の企画展が行われていた。
ランチはスヴェトランスカヤ通りをはさんでホテルヴェルサイユの向かいにあるスタローヴァヤ(食堂)で、それぞれ好きなものを注文する。カフェテリア形式で種類が豊富、ガラスケースにはピロシキ、サラダ、肉料理などが並べられ、スープや飲み物も選べる。ロシア語がわからなくても指さしで「これ、これ」と言えば済むので、気軽に入ることができる。
午後は希望者6名とリューバとディーナでルースキー島に新しくできたオケアナリウム(水族館)に向かう。ほかの人々はホテルで休息したりお土産を探しに出かけたり、自由である。
さて、水族館チームはタクシーで黄金橋とルースキー大橋、二つの橋を渡り、いよいよルースキー島に上陸する。極東大学のキャンパス前も過ぎたが、今日は素通り。停車場でタクシーを降り、プロムナードを歩いて行くと、大きなシャコ貝のようなオケアナリウムの建物が見えてくる。事前情報ではとても混んでいて入場に2時間待ち、などと聞いていたし、日曜日なので心配したが、リューバがチケットを先に手配してくれたこともあり、並ぶことなく入ることができた。ここも“見せる”展示内容で、ロシアはこういうところの見せ方は本当に上手だなあ、と思う。世界最大級の水槽を持ち、館内はとても広く、あちこちに海のオブジェや熱帯ジャングルもあり、まるでディズニーランドみたいな水族館だ。
刷毛で砂をよけると化石を発見した気分になれるコーナーなど、遊び心満載である。
そしてチケットに記載されている時間にプールに行くと、ショーを見ることができた。イルカのジャンプ、アシカの曲芸、腹筋するトドなど愛嬌ある海獣たちのショーはなかなかクオリティーが高い。
見ごたえのある水族館で、全部を回りきることはできなかった。
ふたたびタクシーでホテルに戻る。リューバとディーナとはここでお別れ。二人ともオケアナリウムには行ったことがなかったので、とても喜んでくれた。リューバは日本語が随分上達していたし、ウラジオで再会できて嬉しかった。かわいいディーナもよく付き合ってくれて、ありがとうございました。
少し休憩した後、ホテルの隣のスタローヴァヤ「ニ ルィダイ(Не рыдай=泣くな)」で夕食をとった。今回の旅行の基本は5泊6日コースだが、3泊4日コースで参加した二人はこの夜が最後となるため、全員での晩さん会となった。スタローヴァヤなのでお酒は置いていない。自分たちで持ち込んでもよいと言われたが、不幸にも向かいのお店のレジが壊れていて、今日は売れないという。しかたがないのでクローバーハウスというショッピングセンターの地下にあるスーパー、フレッシュ25まで買い出しに出かけた。ここは24時間営業で何でもそろうので、お菓子などちょっとしたおみやげ品を買うにも便利なところだ。
「ニ ルィダイ」ではペリメニ、蕎麦の実のカーシャ、極東地方特産のわらびの和え物や甘いものまでいろいろお皿に載せて、レジでお会計する。ヨーグルトのピロシキというのは初めて見たので、どんなものかと試してみたら、ヨーグルトというより甘酸っぱいクリームパンのようなものだった。みんなよく食べ、よく飲み、よくしゃべった。
食事の後は勢いづいて、ウラジオストク駅の方向へアレウツカヤ通りを下り、右に入ったところにある、俳優ユル・ブリンナーの像まで全員で散歩した。名舞台「王様と私」のシャムの王様の格好で腰に手を当て、少し顎を上げ気味に遠くを見ているユルの前で、ハイテンションになった私たちは同じポーズで写真を撮った。みんなで笑い転げて、この一年で一番笑ったという人もいた。
せっかくみんな打ち解けたのに、もう帰国する人がいるとは、3泊4日は短すぎる。しかも明日は飛行機が早いので、朝5時50分にはホテルを出発しなければいけない。正味2日しかウラジオストクを見ることはできなかったが、二人とも楽しかったと言ってくれた。二人が満足なら良かったと、心から安堵する。
ホテルに帰るとフロントで、帰国する二人のために明日の朝食ボックスが手渡された。サンドイッチやヨーグルト、ジュース、ゆで卵など軽い食事がコンパクトに詰められていた。(つづく)