2017ウラジオストクの旅 5
<4日目>
月曜日の早朝、3泊4日コースで帰る二人をホテルのロビーで見送り、朝食の時間まで部屋でゆっくりと過ごす。
今日はいよいよ、極東大学のルースキー島キャンパスを訪問する日である。イリイン校長が自宅からホテルまで来てくれたので、残りの団員8名とともに旅行会社に手配してもらったマイクロバスに乗り、島へ向かう。島は前日、オケアナリウムに行った時にも訪れているが、極東大学のキャンパスの中は、事前に全員のパスポートを登録し、車種を伝えておかなければ入口から中へ進むことはできない。
バスを降りると職員のイワノフさんが構内を案内してくれた。このキャンパスは2012年アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議開催のために建設され、終了後に極東大学のキャンパスとなった。極東大学はウラジオストク市内のキャンパスを、数年かけてほぼルースキー島に移した。APECで宿舎として使われたホテルが学生寮となり、寮は敷地内に何棟も存在する。
ウラジオストクでは2015年から毎年、9月にプーチン大統領が力を入れている東方経済フォーラムが開催されており、キャンパスはその会場としても使われている。私たちが訪れた8月は、そのための準備が急ピッチで進められているところだった。大学は夏休みのため、学生の姿はまばらだったが、職員たちはとても忙しそうで、案内のイワノフさんの携帯電話も鳴りっぱなしであった。広大なキャンパス内には極東地方を紹介する州ごとのパビリオンの建設が進められていた。
キャンパスは海に面しているため、海水浴をしている人もいた。自然に恵まれ、富山県が植えた友好桜並木や森、滝があり、私たちはゆっくりと散歩した。そしてメインの建物を見学する。
この建物にはカフェテリアや銀行も入り、学生にとって行き届いた施設となっている。中には大きな会議場がいくつもあり、私たちは“青のホール”と呼ばれる会場を見せてもらった。もう一つ、“赤のホール”もあるそうだ。
そして、首脳会議が行われる国際会議場。大きな円卓は一度に50人くらいは座れるだろうか。各座席ごとに通訳の機械なども設置されており、熱い議論が交わされる会議の高揚感が伝わる。一面ガラス張りの窓からは先ほど歩いた森とその向こうの海がよく見える。
イワノフさんに「座ってもいいですか?」と尋ねると、「もちろん!」と許可をいただいたので、みんなで座らせてもらった。会議に参加した気分を味わうために握手を交わし、賛成の挙手をした。みんなやる気満々である。
それから外へ出て、構内の少し高級そうなレストランでランチを食べた。鶏肉の焼いたのや、野菜のスープ、食べきれないほどのポテトフライ、お昼なので、モルス(ベリーで作った赤いジュース)で乾杯。
昼食後には、もう一度メインの建物に戻り、かつての極東国立総合大学の学長で、今は極東連邦総合大学の法学部長となったクリーロフ・ウラジミル先生に面会する。クリーロフ先生の部屋の前には函館校の写真と函館市から贈られた夜景の写真が飾られていた。
クリーロフ先生は函館校を作った人物であり、私たちはもう長い間友好関係にある。一人ひとり、自己紹介や旅の目的など、がんばってロシア語を話し、旧交を温めることができた。ウラジオストク市と函館市との姉妹提携25年は、ほぼ函館校の歴史と重なるのである。
ルースキー島を後にしたバスは鷲の巣展望台に上るケーブルカーの駅に向かった。駅の向かい側には旧東洋学院の古い建物がある。極東大学の歴史は1899年、この東洋学院創設から始まった。
駅の横には小さな教会がある。通常観光客は中には入れないようで、のぞいたら厳しく注意されたが、団員の一人が正教会の信者である印の十字架を見せると、快くその方だけ中に入れてくれた。
3分ほどのケーブルカーであるが、昔のままの古い感じがして味わいがある。何度乗っても赤と青の2台のワゴンが中間ですれ違う時はわくわくするものだ。
展望台からは街が一望できる。8年前に来た時はまだ橋げたを作り始めたばかりだった黄金橋が、今は街のシンボルとして大きく横たわる。地元のカップルに写真を撮ってくれるようカメラを渡すと、彼氏は初め迷惑そうだったが、彼女が我々と一緒に嬉々としてフレームに収まると、何枚もシャッターを押してくれた。
バスがホテルに戻ったのは夕方4時頃だった。この日の夕食は各自でとることになっていたので、ふたたび街に出て、ドム・クニーギ(本屋)で、また絵葉書や文房具を買った。ちょうど新学期を前に子ども用の文房具が充実しており、ロシア語の筆記体練習帳などがロシア語学習者へのお土産にぴったりなのだ。
夕食は中央広場前にある老舗ロシア料理店「ポルト・フランコ」に入った。パンの中にクリーム煮が入ったキノコのつぼ焼きや、クルトンがたっぷり入ったスープはそれだけでお腹がいっぱいになる。
街は夜でも活気があふれ、人々が闊歩する。大きな通りはあまり危険なことはないが、それでも単独行動は避けたほうがいいでしょう。