＜１０月＞赤の広場（モスクワ）
この写真は、モスクワに到着した当日に撮影したものである。初めてロシアの地を踏んだ興奮の冷めぬまま、寮に荷物を置いてすぐに友人たちと散歩に出かけた。煌びやかな地下鉄駅を抜けて地上に出ると、既に日は落ち始めており、9月の肌寒さが心地よかったのを覚えている。歴史博物館の前に立つこの騎馬像は、ゲオルギー・ジューコフ元帥（1896～1974）である。ロシア人にとって重大な出来事である独ソ戦（いわゆる大祖国戦争）では参謀総長を務め、ソ連がナチスに勝利した象徴となっている。像の横では鼓笛隊の演奏が遠くまで響き、観光客を集めていた。沈みかけた夕日に照らされながら、ジューコフが現代のモスクワを見下ろしていた。
以下はロシア語を学ぶ学生である筆者の、執筆当時の個人的な解釈であり、本学に関わるものを代表した見解では一切ない。2022年2月、プーチン大統領はロシア国内で『特殊軍事作戦』とよばれる、ウクライナへの軍事行動を開始した。この衝撃的な出来事は、私を含め多くの人のロシアに対する感情を決定的に変えてしまった。このカレンダーにも載っている、ロシアで撮影した思い出の写真を今見ると、当時私たちがどれだけ無邪気で恵まれていたのかを思い出し、胸が締め付けられる。ロシアにもウクライナにも私たちと同じ人間が住んでいる。この軍事行動によって、ロシアは国際的に困難な道を何年も歩むことになると思う。少しでもロシアに関わりを持つ者として、ロシアと日本双方に寄り添い貢献できるように努力したい。