FMいるか「デルカーチ先生に聞く 3」
FMいるか「ONE WORLD WAVE」で放送された内容をご紹介する最終回です。
ゲスト:ロシア極東国立総合大学函館校
講師 デルカーチ・フョードル(以下デル)
聞き手:財団法人 北海道国際交流センター
事務局長 池田 誠(以下池田)
<7月19日放送 第3回 イルクーツク・函館・ウラジオストク三都物語>
池田:実は今日はロシアまつり。この番組は事前に収録したものを放送しているんですけれども、ロシアまつりが今、行われているという状況ですね。
デル:でしょうかね?
池田:みなさん楽しんでいただいていると思いますけれども。今回は、極東大の話とか、函館とロシアのこととか、お聞きしたいなと思いますけれども、デルカーチ先生は函館に来てからもう10年以上…。
デル:経っていると思いますけれども。
池田:その間ずっと函館ですか?
デル:途中で一度だけよそに行ってるんですけれども、ほんのわずかなので、だいたいずっと函館と言ってもいいと思います。
池田:もともと出身はロシアのどの辺なんですか?
デル:イルクーツクです。バイカル湖ってご存知でしょうか?
池田:ああ、バイカル湖ね!
デル:そこにイルクーツクという町がありまして、そこの出身です。私は生まれも育ちもシベリア人です。
池田:寒いんですよね、ということは。
デル:冬はですね。夏は函館より暑いと思います。
池田:でも、湖があるってことは、そこで泳げるんですか?
デル:泳げますけど、バイカル湖は冷たいね。とても大きな湖で、冬には完全に凍ってしまうわけなんです。完全に凍ってしまうという時期は、2月にあたります。そして氷がなくなる時期は6月の下旬なので、それは一番水の冷たい時期なんです。ちょうど氷水状態だから。すなわち水が一番温かいのは10月に入ってからですね。ですから逆に10月に泳げるぐらい。
池田:へえー、そうですか。場所的にはモンゴルに近いんですよね?
デル:モンゴルの真上なんです。ですから周りの民族もモンゴル系が多いですね。イルクーツクの3分の1はモンゴル系の顔をしていらっしゃる方ですね。
池田:じゃあ、日本人に似ている感じですね。
デル:そうですね、とても似ています。
池田:それで、函館に10年以上暮らして、生活的にはどうですか?函館とイルクーツクは。
デル:イルクーツクですか?比べにくいですね。
池田:例えばですね、ロシア料理が食べたいなと思ったときにはどうするんですか?
デル:作りますよ、そのときは。まあ、ちょこちょこ材料が足りない場合もありますけど、だいたい問題ないですね。特に北海道料理って、ロシア料理に似た点がいっぱいあります。それで材料もだいたい似ています。
池田:冬に食べるボルシチなんかも、入っているものはジャガイモとかビーツとか…。
デル:なんか、“鍋”ですね。
池田:同じ“鍋”ですよね。そういう意味では似ている部分があるんですよね。お酒なんかはどうですか?ウォッカがほしい、なんてことには。
デル:たまにありますけど、だけどロシア料理に合わせないとだめですね。普通の時にはもうちょっと軽いものでいいです。
池田:軽いって言っても実はものすごく飲んだりするんですかね。
デル:こう見えてもそんなに飲んでないんです。私はどっちかというとワイン派ですね。
池田:ワインですか。ワインも有名なんですよね、ロシアは。
デル:ロシアですか?いや、それほどでもないですね。旧ソ連の国なんですけれども、グルジアというところでは、たしかに有名です。まだフランスにもワインがなかったときにも、もうグルジアでは作っていたんです。それはとても有名なんですね。
池田:あとはパンとかどうなんですか。
デル:パンはですね、主食ですから、例えば日本でいえば米を売る店は特別なライセンスが必要なんですね。ロシアでも食パンを作る会社は同じようにライセンスをもらわなければならなくて、それで種類とか決められていて、種類もそんなに多くないんです。菓子パンはいっぱいありますけれども、食パンはだいたい1種類だけで、黒パンが多いんですけれども、ロシア人から見れば、黒パンはやっぱり食べ物、白パンはお菓子っぽいですね。
池田:なるほどね。黒パン、重い感じですよね、結構。
デル:そうです。
池田:じゃあ、食事的には別に、今のところロシアでも日本でも不自由しないですね。
デル:あまりしないですね。例えば極東あたりは魚も同じくらい食べていますし、作り方だけが違うんですね。
池田:そしてこんなにもう、日本語も上手ですから、全然不自由ないですね。
デル:いや、それはわかりません。ありますよ、不自由は。あります、あります、細かいところで。店とかで品物がほしいんだけれども、それは実際は日本語でなんというのか、一生懸命説明しようとしても、あまり通じないかな。私はまだまだ勉強不足だ。
池田:いやいや、結構なじみのお店とかあるんじゃないんですか?ああ、こんにちは、デルカーチさん!って。
デル:それはありますね。
池田:函館はわりとロシアとゆかりのある町だと言われてるんですが、デルカーチさんから見てどうですか?例えばハリストス正教会とかありますし。
デル:そうですね。私もそういえば、最初に日本に興味を持ったところなんですね。高校に入ってからなんですが、いろんな資料を探してたとき、最初に手に当たったものは、ゴロウニン事件に関係するものなんですね。だからゴロウニンがいたところに私がこれから住むようになるとは思ってもいなかったんですね。やっぱり運命っておもしろいもんだなと思いますけれども。こういう風に運ばれてきたんだ、私は、って。
池田:ゴロウニンのことはもちろん知っているわけですよね。
デル:そうですね、高田屋嘉兵衛とか、日本関連でよく知られている人なんですね。
池田:高田屋嘉兵衛も有名ですか?
デル:そうですね、とてもいい人という評価ですね、その当時のロシアでは。いろいろな交渉をしてた人って。版画の肖像画とか残ったりしてるんですね。
池田:あと、ロシアにいるときに函館の情報で知っていたことってありますか?
デル:夜景のこと。
池田:夜景を知ってたんですか!
デル:ウラジオストクで何人かの知り合いのところで写真を見たんですね。おみやげのカレンダーとか、時計とかで。ああ、おもしろい夜景だな、と思ったら、これは函館っていう町だよ、って。そういうようなものぐらいですかね。
池田:やっぱり夜景はちょっと有名かもしれないですよね。そしてそんな町に住んでいるということなんですけれども。
デル:まあ、ウラジオストクにとても似ています、気候的に。函館には必ず風が吹きます。港町なんですね。ウラジオストクもそうなんですね。
池田:今はロシア極東大学ということで、ロシアの先生もたくさんいますし、ロシア領事館もあるわけですから、そういう意味ではロシアの方々とロシア語で話す機会というのも結構あるわけですね。
デル:ほとんどもう、飽きるぐらいあります。
池田:じゃあ、あんまり問題ないですね、自分の言葉が話せないというようなこともないですね。
デル:逆に日本語を忘れないことが大事だと思います。
池田:じゃあ、あまり極東大学の先生方とばかり話さないで、地域の人と話をしたほうがいいという感じですよね。
デル:そうですね。
池田:いやあ、でも本当に流暢な日本語なので、ロシアの人と話しているというのをこっちが忘れてしまいそうですけど。
デル:よかったですね。
池田:今後、函館とロシアと、もっともっとつながりが出来ていくと思うんですけれども、どんなことでつながったらいいでしょう。
デル:直行便がほしいね。やっぱり函館と大陸が結ばれれば。サハリンはサハリンでいいけれども。観光面でもビジネス面でも、ウラジオストクもとてもおもしろい町ですし、ちょっとだけ飛べばもう別世界になる。とてもヨーロッパ風の光景が見られるし、ウラジオストクはなかなかダイナミックな町で、最近は高層ビルは増えていますし、ずっと何かが建設されている光景です。車は多いし、ありの巣みたいに見える町なんですね。
池田:ということは、函館とウラジオストクが結ばれるといいということですね。ここから大陸がずーっと続いていますから、いろんなところにつながりが出来ると。
デル:そうですね、季節便とかでも考えて。例えばロシアでもスキーとかスノボはとても人気があるわけですが、比較的にスキー場とか少ないし、作るとしても冬がとても寒いので、気持ちよく滑るということはないと思います。それで友だちから、日本にスキーとかに行ってみたいという声が多いんですね。ですから、例えばウラジオストクから函館に便があれば、函館の周りのスキー場も生かして使えるんじゃないかな、と思います。よくサハリンの方からも来ています。それと夏になれば、函館から観光客がウラジオストクにいらっしゃると思います。
池田:行ったらいろいろありますよね。
デル:函館にはロシアの領事館もありますし、ビザの関係とかもいろいろ解決できると思います。
池田:どんどん飛行機とばしちゃいたいですね。
デル:そうですね。青森は季節便なんですけれどもハバロフスク便がありますから、函館はウラジオストク便があれば、いい三角形になるんじゃないかなと思います。
池田:そうですね。ここからデルカーチ先生と何かビジネスにも出来るかもしれないし、観光のいろいろなプログラムとか作れるかなっていう気もしますし。ロシア極東大学が函館にあるということで、情報もありますから、是非ね。
デル:もちろん、興味がある方がいらっしゃれば、アドバイスできると思います。
池田:今後、函館-ウラジオストク、定期便が飛ぶように、そこまで目標を持ってどんどん交流をしていきたいなという感じがします。
デル:夢だなあ、私もロシアに簡単に行けるように。今は新潟経由ですから、やっぱり直接行けば、里帰りも簡単に出来るなあ、と思います。
池田:デルカーチさんのためだけじゃなくて、みんなのためにね。みんなにもウラジオストクから大陸を見てもらおうということで、是非つながりを作っていければなあ、と思いますね。3回に渡りまして、お話を伺い、どうもありがとうございました。
■ウラジオストク