「運命の皮肉」あるいは、新年あけましておめでとうございます!
ロシア極東連邦総合大学函館校 准教授 鳥飼 やよい
ロシアには「NHK紅白歌合戦」のかつての人気と周知度に匹敵するかそれ以上の愛され度を誇る年末の年中行事ともいえる番組がある。長さ3時間超の1975年製のこのソ連映画は、きっと2010年の年末にも放映され、ロシア中の数百万の家庭で視聴されたことだろう。その映画は「運命の皮肉」(“Ирония судьбы, или с лёгким паром”)である。この秋教材として使うために久しぶりにこの映画を見直して、経年のせいか私の見どころが変わったためか、この映画がソ連・ロシア時代を通して今も変わらぬ人気を誇り幅広い年齢層の人々に愛されている理由があらためて心に染みた。新年にあたりこの映画をこの機会に皆さんにご紹介したいと思う。
筋は単純である。戦後が終わり、産業発展、国威発揚でソ連が最高に輝いていた1970年代。都市人口の増加で大都市周辺にぞくぞくと団地が建設されていた。そんな団地に住む青年ジェーニャが、大みそかの晩にバーニャ(公衆浴場)で友人と杯を重ね不覚にも泥酔してしまう。タクシーに自宅アパートの住所を告げて帰り着くと、そこには見知らぬ女性が暮らしていた。
果たしてこれはタイム・トラベルかはたまたパラレル・ワールドか?大みそかの夜に典型的な団地のアパートの一室で繰り広げられる男女2人の出会いと当惑のトラジコメディ。師走の夜の街の表情、雪景色、空港など1970年代ソ連の都市生活のカタログのような風景が挟み込まれ、そこにロシア独特の新年の習わし、それぞれの恋人の存在、親との同居など行き遅れた独身男女の事情が絡み合う。
今見てもまったく古さを感じないのはなぜだろう?
女性主人公のナージャに目を向けてみる。自分のアパートに見知らぬ男性がいるという非常事態に直面した彼女は当然ながら驚き、抵抗といったネガティブな反応をする。しかしその後の状況の行き詰まりの場面で、なんらかの突破口を作る言葉を発するのは彼ではなく常に彼女だ。曰く「シャンパンを開けて頂戴!」(言い争いの後だが新年なのだからこうしていても仕方ない。料理もあるしシャンパンも冷えている。)曰く「これが婚約者のイポリットよ。」(突然立ち寄った女友達にジェーニャを紹介する。うまく切り抜けなくては自分の評判に関わるし嘘も方便。)曰く「あなたを引き留める言い訳がみつからないわ」(いよいよ立ち去ろうとするジェーニャに、相手も同じ気持であることを察知し助け舟を出し、それにより自分に芽生えたある感情を伝える。)という具合だ。
ジェーニャが直情的で不器用であるのに対し、ナージャは迷いつつも必要な時には常に現実的でしかも多少自己中心的な言動を繰り出し、それが困難な状況に新たなポジティブな展開を生みだしているのだ。フィナーレで自分のアパートに戻ったジェーニャのもとを訪れるのも、そのための長距離の列車の切符を買うのもナージャである。自ら行動しておりそれゆえに最終的に幸せをつかむということであろう。ここには今に通じる、受け身だけではない女性像が示されている。
また、ある意味密室劇であるこの映画では、出会いからの2人の内面の変化や心の揺れ動きがつぶさに台詞や演技の一つ一つにみっちりと反映されている。それがソビエト演劇の伝統かもしれないが、それを追いながら観客は「あのような心の動きはありか?」「なぜあんな表情をするのか?」「私なら何と言っただろうか?」などといちいち自分の経験と比べ合わせていることに気づくであろう。まるで自分たちも同じアパートに居合わせているようだ。
ジェーニャが終わりに「この一晩で何年か分の歳をとったような気分だ」と言うのだが、まさにこの映画を見ると、経験ある者は自分の来し方を振り返り、また、まだ経験浅い若者は何人か分の人生を覗き見したような気持ちになれるのだ。この辺りが時代を経て老若男女を問わないこの映画の永遠の人気の秘密かもしれない。ついでながら、主人公2人が劇中歌で歌う歌は名作ぞろいである。
時代を経てロシア人の心を鷲掴みにし続ける映画。ロシア人をもっと知りたいと思う人、あるいはロシア人との付き合いに行き詰ったと感じている人がいたら、一度この映画を見ることをお勧めする。なにかのきっかけが掴めるかもしれない。
校名変更のお知らせ
函館校の本学でありますウラジオストク市の「極東国立総合大学」が、平成22年10月5日付けをもちまして「極東連邦総合大学」と名称を変更いたしました。
したがいまして、函館校も平成23年1月 1日付けをもちまして「ロシア極東国立総合大学函館校」から「ロシア極東連邦総合大学函館校」と名称を変更いたしますのでお知らせいたします。
本校のホームページにも掲載しましたが、学校印や封筒・学校パンフレットなど印刷物の記載変更を順次進めていく予定です。
皆様のご理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
АБВГ-Day
11月10日(水)第3回АБВГ-Day (アーベーヴェーゲーディ)が催されました。函館校でロシア語を学習している日本人学生と、日本語の学習のため留学中の東洋学大のロシア人学生が参加し、互いに日ごろの学習の成果を競い合いました。
はじめに行われた「個人発表部門」では、日本人学生はロシア語で、ロシア人学生は日本語で、暗唱、歌唱、一人芝居、早口言葉、なぞなぞなど、自由な形式で発表を行いました。
プログラムの最後は審査結果発表と表彰式が行われました。「個人発表部門」上位3位入賞者と留学生1位に賞状と賞品が贈られ、さらに「ロシア語大会部門」1位になったチームには、教員からデコレーションケーキが贈られました。
結果は以下のとおりです。
第1位 ロシア語科1年 小早川 眸
Письмо Татьяны, отрывок из 《Евгения Онегина》
詩暗唱「タチアナの手紙」プーシュキン「エフゲニー・オネーギン」より
第2位 ロシア語科1年 畠山 重人
Песня 《Славное море, свящённый Байкал》
歌唱「栄光なるバイカル」
ロシア語科2年 伊藤 里恵
Стихотворение 《Внемлющая звезда》
詩暗唱「聞き星」茨木のり子作
第3位 ロシア地域学科1年 鍋谷 真依
Отрывок стихотворения 《Анчар》
詩暗唱「毒樹」プーシュキン作より抜粋
最優秀留学生賞 ナザーロワ・オクサーナ
詩暗唱「生きているということ」谷川俊太郎作
Стихотворение 《Что значит жить》
石館とみ奨学金
3月10日(木)、石館奨学金選考審査会を行います。審査対象となる学生は『石館とみ 奨学金』の選考基準を満たしていること、かつ、審査会に先立ち開かれる3月7日(月)の教授会において奨学生候補として選ばれ、審査会に推薦された者です。
奨学生候補生として選ばれた学生には、3月7日(月)本人へ通知します。この通知を受けた学生は、事務局で審査会の説明を受け、各自、期日までに直筆で小論文を書き、面接の準備をしてください。なお、事務局での説明と審査会には本人が出席しなければなりません。
石館とみ奨学金
目 的:日ロ交流を担う優秀なる人材の育成と、教育成果の向上を図る。
奨学金額:1名35万円を支給する。
人 数:年2名を上限とする。
選考基準:年度の学習成績上位で、かつ、社会奉仕の精神が顕著に見られる者 。
選考方法:選考基準をもとに校長が候補者を推薦し、選考審査会での小論文審査および面接試験の結果により決定する。
マースレニッツァ開催
冬を追い出し、春の訪れを喜ぶロシアの伝統的なお祭り「マースレニッツァ」を2月18日(金)に行います。
学校行事ですが、どなたでも見学できます。近くにお越しの際はご覧ください。
JASSO奨学金関連
適格認定入力は1月28日(金)締め切りです。対象者は必ずこの日までに入力を済ませてください。
貸与継続を希望していても、この期間に入力をしない場合、奨学金は自動的に打ち切られますので、注意してください。
詳しくは校内掲示板で確認してください。
試験日程
卒業試験日程
ロシア地域学科4年生を対象に下記の日程で国家試験を行います。ロシア語科2年生はこの期間に卒業試験を行います。
2月28日(月)~3月4日(金)
ザチョットは以下と同日程で行います。
後期試験日程
ザチョット:2月21日(月)~2月25日(金)
エグザメン:2月28日(月)~3月 4日(金)
※試験の時間割は、後日掲示します。
※卒業年次以外のみ、3月7日(月)~11日(金)まで再試を行うことがあります。
出席不足率の学生は
本校は出席率80%以上が期末試験の受験資格となっています。真にやむを得ない理由のため出席率が低かった学生は、受験資格を得るため担当教員の指導を受けるなどして遅れを取り戻す必要があります。最大限の努力をしてください。
卒業証書授与式
平成22年度第16回卒業証書授与式は 次の通り挙行します。卒業生と在校生は全員出席してください。
卒業証書授与式
日 時:3月12日(土)午前10時
場 所:本校3階講堂
なお、卒業式前日の11日(金)は、卒業式のリハーサルを行いますので、卒業予定者と在校生は全員出席してください。リハーサルの時間等、詳細は近くなったら校内掲示板に貼り出しますので確認してください。
卒業式の後は、引き続き同会場で自治会主催の卒業生を送る会が、また、同日夕方は、市内ホテルにて同窓会パーティーが催されますので、いずれも参加してください。
後日改めて自治会パーティーと同窓会パーティーの案内と出欠をとりますので宜しくお願いします。
短信
税関職員ロシア語研修,社会人インテンシブコース開講
1月6日(木)から、税関職員ロシア語研修が開講しています。研修期間は3月3日(木)までです。
今年は神戸税関の研修生を含む5名の研修生の皆さんが、実用ロシア語と業務に欠かせない税関ロシア語を勉強されるほか、ロシア経済・ロシア文化なども受講し知識を深めます。
また、1月17日(月)からは社会人インテンシブコースも開講します。北洋銀行から研修生1名が、3月18日(金)まで、ロシア語文法と会話を中心にマンツーマンで受講します。
ロシア料理レシピ
学報には、ロシア料理のレシピを不定期に掲載しています。第2回目の今回ご紹介するのは、きのこを使った料理「きのこの煮込み(ロシア風)です。
レシピは、前回のボルシチに続き、アニケーエフ先生のお宅のものです。
「きのこの煮込み(ロシア風)」
◇材料(4人分)
玉ねぎ・・・・・・・・・大1個
バター・・・・・・・・・大さじ3
じゃがいも (男爵)・・・・3個
しめじ・・・・・・・・・1パック
しいたけ・・・・・・・・1パック
マッシュルーム・・・・・1パック
サラダ油・・・・・・・・大さじ2
トマトケチャップ・・・・大さじ2
生クリーム・・・・・・・1パック
パセリ・・・・・・・・・適宜
小麦粉・・・・・・・・・適量
塩、コショウ・・・・・・各適宜
パプリカ・・・・・・・・少々
◇作り方
- 玉ねぎは皮をむき、半分に切り、薄切りにする
- 鍋にバターを大さじ2溶かし、1.を炒める
- しめじは石づきを切り、小房に分ける
- しいたけ、マッシュルームは石づきを切り、薄切りにする
- フライパンにサラダ油を熱して、3.4.を炒める
- 5.の汁気が無くなったら、小麦粉を振り、焦がさないように弱火でほぼ火を通す
- 6.を2.の鍋に移し、生クリームを半分入れ、トマトケチャップを加えてひと煮立ちしたら、塩、こしょうで味を調え、混ぜながら5分弱火で煮込む
- じゃがいもは皮をむき、鍋でゆでる。火が通ったら、塩で味付けし、水気を切り、温めた生クリームとバター大さじ1を加え、よく混ぜ合わせながらつぶす
- 器に7.を盛り付け、パセリのみじん切りを散らし、付け合わせに添えた8.にパプリカを振る。
アントン・ステパーノフ
ピアノ・リサイタル開催のお知らせ
2010年のショパンコンクールでは上位入賞をロシア出身者が占め、中でもロシア国立グネーシン音楽アカデミー勢の活躍が目を引きました。そのグネーシン音楽アカデミー専門ピアノ科講師で、ロシアピアニズムを受け継ぐ正統派とも称される氏の名演にご期待ください。多数の皆様のご来場をお待ちしております。
アントン・ステパーノフ(Anton Stepanov)
ロシア・モスクワ生まれ。
リスト国際コンクール入賞(ワイマール)。
ロシア、沿ドニエプル共和国、ドイツ、中国においてコンサート活動およびマスタークラスを行っている。
ロシア国立グネーシン音楽アカデミー専門ピアノ科講師。
ポポヴァ記念合唱芸術アカデミーピアノ科講師。
日 時:平成23年2月8日(火)
開場18時00分 開演18時30分
場 所:遺愛女子中学・高校講堂(函館市杉並町23-11)
*駐車場が手狭なため公共交通機関をご利用願います。
チケット:前売券 一般2千円、小中高1千円
当日券 各500円増
発売場所:カワイ楽器函館店、ヤマハアベニュー五稜郭店、ロシア極東大学函館校事務局
演奏曲目:
ムソルグスキー 展覧会の絵
シューベルト 三つのピアノ曲 D946
ベートーヴェン ソナタ第27番 ホ短Op.90
問合わせ:090-3775-6146(吉田)または、ロシア極東大学事務局(大渡)まで
函館日ロ親善協会からのお知らせ
10~12月の主な活動実績
○ 10月12日(火)
ユジノサハリンスク市公式訪問団歓迎夕食会
ユジノサハリンスク市からナドサージン 第1副市長を団長とする公式訪問団の皆さまが来函され、歓迎夕食会が催されました。当協会からは倉崎会長ほか10名が参加しました。
○ 10月15日(金)
ロシア軍艦寄港歓迎式典
函館港にロシア軍艦「アドミラル・パンテレーエフ」が友好親善のため寄港し、当協会では海上自衛隊函館基地隊のご協力の下、協会主催の歓迎式典を行いました。
指令官のソコロフ海軍大佐は「交流を通じ、相互理解と信頼を深めたい」とご挨拶され、式典後の昼食会席上で倉崎会長に記念品を手渡されました。
また同艦滞在中に催された艦上夕食会には倉崎会長はじめ当協会理事・役員の方々が出席いたしました。
○ 10月21日(木)ロシア極東大学留学生歓迎パーティー
○ 11月16日(火)ロシア極東大学留学生送別会
ロシア極東大学留学生支援実行委員会の招きにより、函館で日本語・日本文化の研修を受けていた留学生4名の歓迎会・送別会に倉崎会長・松本専務理事が出席しました。
○ 12月7日(火)函館日ロ親善協会講演会&クリスマスパーティー
出席:在函ロシア人・ウクライナ人22名、
ロシア人技術者他9名、会員他32名
会場:ホテル函館ロイヤル
今年はロシア領事館からサプリン総領事、 ブロワレツ所長、またハリストス正教会の ドミートリエフ司祭など在函ロシア・ウクライナの方々に加え、ロシア極東地域からの技術交流促進事業(北海道)によって来函したロシア建設企業関係者の方々9名にもご参加いただき、総勢60名を超える盛大な会となりました。
クリスマス・パーティーに先立ち、在札幌ロシア連邦総領事館サプリン総領事にご講演いただきました。サプリン総領事は昨今の日ロ交流について経済交流の現状などを紹介しながら「ソ連崩壊直後の混乱期を超え、ロシアに新しい時期が来た。この現状をありのまま直視してほしい。日本とロシアは、昔とは違う新しい関係を築くべき」と述べられました。
今年のパーティーでは小さなサンタクロース・小柏孝太郎君(2歳)が登場し、来場した子供たちにプレゼントをくばりました。またビンゴ・ゲームなども催され会場は大いに盛り上がりました。
≪係りより≫
新年あけましておめでとうございます。皆さん良いお年をお迎えのことと思います。今年は、卯年です。ウサギのように飛躍できることを祈念しております。
「ミリオン・ズビョースト」66号をお送りします。今年もどうぞよろしくお願い致します。(長谷川)