No.13 1997.10"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

ウクライナ日記

ロシア極東国立総合大学函館校 助教授 トリョフスビャツキー・アナトーリー

ウクライナ
国土面積――603.7千平方キロ(旧ソ連の2.7%)
人口――51,000,000人(73%-ウクライナ人 21%-ロシア人)
西から東まで1,300キロ、北から南まで900キロ、国土の95%-平原
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夏休み中、4年ぶりに家族3人でウクライナに行った。極東出身の私にとってウクライナはもう一つの母国となり、親戚や友人、オデッサ日本クラブの皆さんとの再会を楽しみにしていた。
4年前に物不足、燃料危機、超インフレなどに悩んでいたウクライナから静かな日本に逃げたように見えたかもしれないが、今回こそウクライナはどう変わったのか、改革は(通常、ロシアで行われたものの後を追う形を取ることを新聞やキエフの親戚の手紙からわかっていた)どうなったのかなどを自分の目で確かめる良いチャンスであった。向こうでの1ヶ月はあっという間に過ぎ去った。出会いの嬉しさ、別れの悲しみ…。ダーチャ(郊外の小さな家)でのシャシリーク(バーベキュー)、夜は星を眺めながらウクライナやロシアの歌…、ガリルカ(ウクライナのウォッカ)の渋い味…、ドニエプル川の雄大さとステップ風の爽やかさ…。一方、日常生活の面では、すぐ目立つのは、ものの豊かさと街のヨーロッパ化。しかし、ロシア語の看板は街から完全に姿を消した。やはり、「弟」コンプレックスが強い。しかし、「兄」のロシアもウクライナが独立して、自分の道を歩みたいという事実を全く自覚していない。「兄」と「弟」が対等の立場で話せるようになるまでは、文明的な協力が不可能であり、ソ連の誤りが繰り返されるだろう。
今のウクライナは、どこに行くのか。西に行くのか、東に戻るのか。今の政権(クチュマ大統領)は西へ行きたい行きたいと、親西欧路線を続けているが、ロシアとの文明の親近性と歴史的統一性を忘れてはいけないと思う。
何しろ、ロシアに住む数千万人のウクライナ人にとっても、ウクライナに住む約一千万人のロシア人にとっても両国間の関係は抽象的なことではなく、日常生活に関わることである。これから、ウクライナもロシアも人権を尊重する民主的な国として世界文明に貢献すると期待している。
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4年ぶりのオデッサ。デリバソフスカヤ通りのにぎやかさとプリモルスキー並木道の潮風。黒海に映っている新ロシアの星。「黒海の真珠」、「白アカシヤの街」…。
ロシア人なら誰でも知っているオデッサの歌。海に面するこの街はV.カンヂンスキーをはじめ、大勢の作家や音楽家、学者を世界各国に送ってきた。あの有名なシルベスター・スタローンの家族もオデッサ出身。
10年以上オデッサで活躍しているオデッサ日本クラブ。日本語や日本文化に親しみたいオデッサの子供達、大学生は週一、二回集まって、会話や漢字の書き方などに夢中。オデッサ日本クラブの皆さんはあなたからの手紙を待っている!ホームステイもO.K.
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帰りはオランダのアムステルダム経由だった。まさにそのアムステルダムで、300年前若きピョートル大帝は造船所で船の作り方などを学んで、日本のこともアムステルダム市長から初めて聞いた。
成田までの11時間のうち、オランダ航空の飛行機は9.5時間ロシアの空を飛んだ。