ロシアの新年
ロシア極東国立総合大学函館校 助教授 コルビナ・リュドミーラ
家族や友人や親しい人たちから遠く離れたところで私は2度目の新年を迎えようとしています。だからこそ、私たちの国ロシアで、この祝日をどうやって祝うのかを思い出すのかもしれません。
新年は最も晴れやかで嬉しい祝日とされています。大人も子供も同じように大好きです。子供達にはこの祝日に特別の関わりがあります。彼らにとって新年はある秘密がつきものなのです。そして、欲しがっていたプレゼントがもみの木の下にあるのを子供達がそれぞれ見つけられることに秘密があるのです。もちろんプレゼントはデットマロース(サンタクロース)が置いたものです。両親の依頼で、スネグーラチカ(サンタクロースの孫娘)と一緒に、小さな子供達のいる家にやって来たデットマロースから直接プレゼントをもらうことができる子供達もいます。
プレゼントをもらうのは小さな子供達だけではありません。ロシアでは、きまって新年を迎える夜にお互いプレゼントを贈り合うのです。それは家族同士だけでなく、友人や親しい人同士もです。
新年が近づいてくるのはあらかじめ2週間ぐらい前には感じられるようになります。街の通りでは本物のもみの木を持って歩いている人がいたり、商店には新年用のおもちゃやもみの木の飾りが売られている売場ができたり、中心街がイルミネーションで飾られたりします。ウラジオストクの中央広場にはタイガから運ばれてきた美しいもみの木が立てられ、子供向けに冬の遊び場が作られます。
家族に小さな子供がいるいないに関わらず、それぞれの家庭にはもみの木が立てられます。以前、もみの木は本物だけでしたが、最近は小さい作り物のもみの木のほうが好まれているようです。このほうが毎年買わなくても済むので費用が安くなるし、資源の節約にもなります。
新年を迎える準備をしない家はありません。私が子供の頃やその数年後も、冬に果物があるのは普通のことではありませんでした。みかんはごちそうの部類に入っていて、12月だけ登場しました。みかんが家にあるのは、もうすぐ新年が来る事を意味しました。今の子供達はどんな珍しいことにも驚かなくなってしまいましたが、新年を待ちこがれる気持ちは今も変わらないようです。幼稚園や小学校低学年の子供達は、幼稚園や学校で行われる発表会で着る新年用の仮装衣装を両親と一緒に準備します。更に、学校の冬休み中には、どの劇場や文化宮殿でもデットマロースやスネグーラチカやロシアのおとぎ話の主人公達が登場する劇が上演されます。高校生や大学生のためには新年の仮装ダンスパーティーが行われます。
ロシア人はお客様をもてなすという点では誰にも負けていません。歌やダンスもでてくる楽しい宴会が大好きで、新年のパーティーではまさにそれが一晩中続きます。
お祝いの席につくのは恒例のように夜の10時半か11時で、午前0時まで過ぎ行く年を惜しんだり、1年間の特に大きな出来事を思い出したりします。クレムリンの大時計の鐘の音のもとでシャンパングラスをぶつけ合う音は、新年の到来を意味します。新年の食卓のために主婦はいちばんおいしくて、みんながいちばん好きな料理を用意します。テーブルもきれいにセッティングします。1月1日の朝に出されるペリメニは、新年の食卓に欠かせない料理です。
お決まりのように楽しい宴会は朝5時まで続きます。みんなは、ただ飲んだり食べたりするだけでなく、歌ったり踊ったり、衣装を身につけ仮面をつけてご近所に新年のご挨拶に行ったりします。この日の夜、テレビではおもしろい番組をやっているので、望むなら静かにゆったりとテレビを見ることもできます。
ご存知の通り、「新年に望んだものやお願いしたことは全部手に入るし、全部叶います。」これは誰もが信じたい新年の決まり事です。だからお互いに新年のお祝いを言い合いながら、人々は近寄って来る苦しみや不幸が過ぎ行く年にとどまり、新年には夢が実現するように願うのです。
これを読んでくださった皆さんに来るべき新年のお祝いを申し上げるとともに、健康で幸せで全てが順調にいきますように、望みが叶いますようにお祈り申し上げます。新年に学業を終える皆さんが、良い成績で卒業され、やりがいのある仕事に就けることをお祈りいたします。