個性
ロシア極東国立総合大学函館校 事務局次長 田畑 聡文
黒澤明は、生前、自作映画「白痴」(ドストエフスキー原作;昭和26年松竹)の撮影の舞台となった冬の札幌について、まるでヨーロッパのような街並みだったと語っている。そして、「現在はすっかり個性を失ってしまった」とも。
黒澤は、当時、ロシア国内での撮影を考えていたが、夢かなわず、札幌を撮影の場に選んだ。なるほど、映画「白痴」には、結果として、主演女優の原節子以上に、戦後間もない札幌の美しさが封印されているような気がする。
札幌では、この数年来、JR北口が再開発され、現在、来春の竣工に向け、タワーホテル、デパートからなる駅ビルが造られている。無機質なコンクリートで固められたタクシーヤードなどは、東京近郊の都市の駅前と似ており、確かに表情に乏しい。黒澤が今この風景を見たならば、果たして何と言うだろうか。
ドストエフスキーやトルストイなど、ロシア文学を愛した黒澤は、この後も、
江戸時代の長屋を舞台とした、「どん底」
(ゴーリキー原作;昭和32年東宝)など、幾多の名作を発表し続け、監督降板の失意の時を経た後、ついに、極東ロシアの地で「デルス・ウザーラ」を製作、発表する。(昭和50年)
晩年の作品において、黒澤は撮影前のイメージを絵コンテとして残している。かつて、画家をめざしていたからであろうか、その豊潤な色づかいには驚かされる。
しかし、私は「白痴」や「七人の侍」をカラーのリメイクで見たいとは決して思わない。それは、モノクロの画面によって、白い花や雪が一層清楚に見え、日の光が一層まぶしく感じられるからである。色の無い画面が逆にヨーロッパの街並みのたたずまいを感じさせてくれる。皮肉なことに晩年の黒澤映画はカラー作品によってリアリテイを無くし、個性を失ったのだと思う。
それにしても、函館は色にあふれた街である。私が日々、職員室から眺める風景は、何と素晴らしいことか。この風景はモノクロでは撮りたくない。
先日、人気ドラマのロケが八幡坂であり、役者が坂を上ってきた。港には船が無く、キャーキャー叫ぶ女子高生は、制服姿で地面に座り込む。少し悲しい。
中間試験
中間試験日程
下記の期間を中間試験期間とします。この期間は、通常の時間割どおりに授業が行われますが、科目により試験を実施します。試験の有無・実施方法は各担当教員よりお知らせします。
12月2日(月)~12月6日(金)
留学実習
ロシア地域学科3年生ウラジオストクへ出発
9月15日、ロシア地域学科3年生の3名が留学実習のためウラジオストクへ出発しました。現地の人と会話することで日頃の勉強の成果を確かめたり、ロシア人の日常の暮らしを自分の目で見たり、さまざまな地域からやって来た学生たちとの寮生活の中で新しい出会いや発見があるなど、忙しく充実した毎日を送っていることでしょう。大きな収穫を得て帰国して欲しいものです。
留学実習説明会開催
ロシア語科1年生を対象に第1回留学実習説明会を行います。日時は12月3日(火)14時40分から、場所は第5教室です。留学実習についての大まかな説明をしますので、質問があれば用意してきてください。
パスポートを持っていない学生は、平成15年1月10日までに取得しなければなりません。申請から発給までには約2週間かかりますので早めに手続きをしてください。函館で申請するには渡島支庁(函館市美原4丁目6番16号 ℡0138-47-9000)へ出向くことになります。申請用紙は事務局にもあります。
第5回はこだてロシアまつり
函館市民の皆さんにロシアを知って好きになってもらおうと平成10年にはじめたこのまつりも5回目となりました。今年のテーマは「ロシアのアニメ」。皆さんご存知の「チェブラーシカ」だけでなく、楽しくてかわいいロシアのアニメをいろいろなかたちで紹介します。もちろん毎年人気のロシア料理レストラン、ステージ発表などもあります。
日 時:平成14年11月9日(土)10:00~15:00
予定されている
催し物:ロシア料理レストラン・喫茶店
パネル展・キオスク
ステージ発表(バンド演奏・合唱・ロシア人留学生による歌など)
学生課より
ТРКИを受験してみませんか?
本校では12月7日(土)、8日(日)に、ロシア教育省認定「外国人のためのロシア語能力検定試験(略称=ТРКИ)」を実施します。
本試験はロシアの大学で学ぼうとする外国人が、ロシア語の講義を理解する語学力があるかを見極める目的で開発され、ロシア国内では1998年から実施されています。
それまでロシアの大学に編入学を希望する外国人は、各大学が個別に実施するロシア語試験に合格するか、事前に大学に附属するロシア語学校で長期間の研修を受けなければなりませんでしたが、この試験に合格することで、ロシアの大学あるいは大学院の入学、編入試験の受験資格を得られるようになりました。
本校で実施されるのは今回で3回目。日本からロシアの大学・大学院への進学を目指す学生やロシアの大学生レベルの語学力があるかを試してみたい方々のために1級と2級、そして一般のロシア語学習者のレベルチェックとして基礎テストを実施します。
受験を希望される方は事務局までお問合わせを。従来ロシア国内でしか受験できなかった試験を日本国内で受験することができるこの機会に、力試ししてみてはいかがでしょうか?
冬季休業
今年度の冬季休業は、12月9日(月)から1月12日(日)までです。休業中も平日は事務局や図書室などの利用は可能ですが、12月28日(土)から1月5日(日)までは事務局も休業となりますので留意してください。なお、授業開始は1月14日(火)からです。
お知らせ
クリーロフ学長来校
ウラジオストク本学のクリーロフ・ウラジーミル学長が10月22~23日に来校します。このたび学長は日本で最初にロシア文学科を開設したことで知られる早稲田大学より名誉博士号を授与されることになり、その授与式出席のための来日です。
校内で学長を見かけたときには気軽にロシア語で挨拶してみましょう。
留学生がやって来ます
今年も本学より6名の留学生が本校にやって来ます。10月28日(月)に来函し、11月23日(土)に函館を離れます。この間、前半の6日間をホームステイし(10月28日から11月2日迄)、残りの期間をホテルに滞在します。
6名の留学生は、日本語の学習のために来校するわけですが、ロシアまつりに参加するなど、皆さんと同じ屋根の下で生活しますので、交流を深めていただきたいと思います。
尚、ホームステイを引き受けていただける家庭を探しております。お引き受けいただける方がいましたら、事務局へお申し出ください。
米原万里講演会
今年はウラジオストク市姉妹都市提携10周年、ユジノサハリンスク市姉妹都市提携5周年の節目の年にあたり、これを記念してロシアに精通する人気作家米原万里氏をお招きして記念講演会を開催いたします。
主催:米原万里講演会実行委員会
構成団体 ロシア極東大学函館校、函館日ロ親善協会、日本ユーラシア協会函館地方支部
日時:11月6日(水)13:00~14:30
場所:金森ホール(函館市末広町14-12)
℡ 23-0338
講演題:ロシア人に学ぶ小咄の作り方
なお、米原氏の著書は本校図書室にもありますので、講演会の前に是非読んでみましょう。
学生からの投稿
エッセイ『空想』
ロシア地域学科4年 古石和宏
私は夢みたいなことを考えるのが好きだ。空想(想像)するのも好きだし、ただボーッとするのも好きだ。夜明け前の暗みがかった水色の空がだんだん明るくなっていくのを見ながら、或いは、その時の空の色を想像しながら考えるのは本当に気持ちいい。
高校生の頃、「地球の歩き方」を読みながら、ドイツを旅する自分をよく想像していた。実現したのは、5年後の大学の卒業旅行の時である。また、行きたいと思っている。
それから、その頃から今に至るまで、映画「大脱走」を何度も見て(100回以上)、登場人物と自分を重ねて感情移入して見ていた。偽造の身分証明等一式揃えて架空の人物に成りすまし、変装して遠くに逃げるのはカッコいい。映画の冒頭、「独房王」のヒルツ(スティーブ・マックイーン)が、捕虜収容所長に、「アメリカ人は礼儀知らずかね」と聞かれ、「99パーセントはな!」と格好よく不敵に答えるシーンから、この映画に決定的に魅きつけられた。映画の登場人物の中では、ヘンドリー(ジェームズ・ガーナー)とブライス(ドナルド・プレザンス)の二人が、特に好きだ。
最初は、TVを見て、ビデオに録画して、時々見るだけだったが、VHSのビデオをレコード店で買い、よく見るようになり、今は、DVDで見ている。ビデオに比べDVDは倍以上に映像がきれいなので最高である。オープニングのテーマ曲もいい。サントラのCDも時々聴いている。作曲家のエルマー・バーンスタインは、素晴らしい才能の持ち主だ。私は、今でも駅のプラットフォームを歩く時や汽車の乗り降りの時は、映画の登場人物になった気分で辺りを見渡したりする。
独りでいるのは、とにかく楽しい。しかし、日中、外で友人と話をしたりするのも同じくらい楽しいし、やがて近い将来出会うだろう理想の女性と二人きりになるのも悪くない。Eメールのやりとりや文通もしたい。長電話も。友人たちと会うならカフェやレストランがいい。
私は、セダンカの秋の森や冬の凍った海、バーベキュー、キャンプファイヤーなどを想像するのも好きだ。紅葉の木の葉の舞う森の中を、冬の大雪原をずっと遠くまで歩いて行きたい。それから、人里離れた山奥の森の中の大きな湖のほとりに邸宅を構え、静かに生活したい。その湖の場所は、海からも比較的近い所にあり、私は、海沿いの高い崖の上に小さな小屋を建て、時々そこで生活する。日によって、時間帯によって変化する海の色を一日中眺めていたいからだ。
日中は、湖のほとりや森の中を散策したい。時々立ち止まり、森の木の葉の色を見たり、湖の水の色を眺めたい。
外の空気を吸いながら、森の中を歩くのは気持いい。地面の上に座り、コーヒーや紅茶を飲み、サンドイッチを食べながら森の木々の美しさに見とれているのもいい。鳥や動物の声、木の葉の音、小川のせせらぎを聴きながら。
窓の外には、湖と森と山が広がり、部屋の中にはDVDやCDのステレオ、油絵、イス、テーブルそして大きな古時計がある。また、海沿いの崖の上の小さな小屋の窓からは大海原とカモメ、沖には小さな漁船等が見える。少し離れた所には灯台がある。湖や海、空の色はいつ見ても最高に美しい色をしている。私はそれを独りで眺めるのが好きだ。
函館日ロ親善協会からのお知らせ
7~9月までの協会の主な活動実績
7月17日(水)
企画委員会開催
ユジノサハリンスク市訪問事業、ロシアフォークアンサンブルほか14年度記念事業について協議
7月31日(水)
ウラジオストク市、ユジノサハリンスク市訪問団歓迎会開催
ウラジオストク市のロガチョフ副市長およびユジノサハリンスク市のシドレンコ市長ほか計6名の姉妹都市からの訪問団を招き、協会主催の歓迎会を実施いたしました。
(場所;五島軒本店、出席者40名)
8月5日(月)
理事会開催
ユジノサハリンスク市訪問事業、ロシアフォークアンサンブルほか14年度記念事業について協議
9月6日(金)~9日(月)
ユジノサハリンスク市訪問事業実施
参加者
松本満隆 専務理事
真木序夫 理事
加地律子 理事
北原善通 理事
中江捷二 理事
桶本建郎 会員
堀浜 賢 会員
村本淳一 会員
(函館市民オーケストラ)
函館市公式訪問団および函館市民オーケストラとともに、ユジノ市を訪問し、ユジノ市創建120周年記念式典に出席、サハリン国立総合大学に対し、日本文学全集60冊および日本歴史全集26冊を寄贈しました。現地では、函館校卒業生高倉聖子さんが通訳を行い、ユジノ市民との交流を図りました。
9月27日(金)
18:00開演 函館市芸術ホール
ロシアフォークアンサンブル―ベェチェ&ロシアーニ公演
≪係りより≫
後期の授業が始まって3週が過ぎました。すでにもとの生活リズムに戻り、充実した日々を送っているものと思います。
かねてより学生へ投稿を呼びかけておりましたところ、ロシア地域学科4年の古石さんから原稿を頂きました。ありがとうございます。
次号のミリオン・ズビョーストは、2003年1月発行予定です。原稿締切は、12月13日(金)となっております。皆さんからの投稿をお待ちいたしております。(小笠原)