八幡坂で20年
ロシア極東連邦総合大学函館校 准教授 鳥飼 やよい
八幡坂に極東大が開校し20年が経つが、学生が入れ替わり教職員の顔ぶれが変わっても続いていくもの、それは「コール八幡坂」である。
開校1年目の1994年秋に、授業の外にもロシア文化体験の場を作ろうとプロコーポワ先生を中心としたロシア語の先生たちにより「ルースキー・クルブ」が結成された。
放課後に週一回、歌好きな学生らに私も加わり、伴奏楽器もなく先生たちから文字通り「口移し」で教えられるメロディーでプリントの歌詞を見ながら歌った。ここで私たちはМиленький ты мойやОй, мороз мороз等のナロードニェ・ペースニ(民衆の歌)と出会った。「ルースキー・クルブ」ではまたロシアのダンスも踊った。今も残る唯一のダンスレパートリーの「紡ぎ娘」の振付は、当時の先生たちのアイディアの結晶である。「ルースキー・クルブ」の活動はしかし、担当の先生方の相次ぐ異動のため休止状態となった。
一期生が初のロシア留学を終えて帰国すると同時にロシアの音楽をたくさん持ち帰った。そうした音楽を聞くにつれ、たとえ日本では馴染みが薄くとも、今のロシア人が歌う同じ歌を歌いたいという気持ちが募った。そのため、帰国したロシア人の先生に代わって私が指揮を執り始めたこの頃に、私たちは民族衣装を着たアンサンブルから普段着のコーラスグループへと方向転換した。
その頃、年に一回の大学のお祭がそれまでの新年祭を兼ねた1月の「ヨールカ祭」から秋の「ロシアまつり」に進化するという動きがあった。そこにステージ部門が設けられたことで、コーラスにも年に一回の発表の場が確保された。ちなみに「コール八幡坂」の名称は、「ロシアまつり」のプログラム用に是非とも必要と言われ、学生に意見を聞く暇もなく私が勝手に命名したものだ。私事ながら母が所属する合唱団「コール三笠」から一部を拝借したが、そこに我が函館校が立つこの函館の坂道の名を加えたのは我ながら妙案だったと思う。
以来「コール八幡坂」は順調に活動を続けて来た。選曲に困ればロシア人の同僚たちにリクエストを募り、あるいは歌に詳しいアニケーエフ先生からよく頂いたロシア音楽の詰まったCDを参考にした。その後、ロシアの若者文化の知識ではロシアでも右に出る者のないデルカーチ先生がブレーンに加わったことでレパートリーに一層の広がりができた。民謡やポップスを始め、アニメや映画の主題歌の他に、いわゆるエストラーダやバルディと言われるロシア独特のジャンルの音楽、つまりクラッシックを除くロシアの大抵の歌のジャンルをカバーしつつ、どれ一つとっても私が「歌いたい!」と思える名曲が揃ったのである。
本稿執筆に当たり、これまでに歌った曲目を初めて数えてみた。すると100曲を少し越えていた。簡単に100曲というが、日本の歌でもそれだけの曲名を挙げるのは難しいと思う。ましてその全てを歌えるとなるとかなり珍しい部類に入るだろう。1年間に平均12曲を取り上げたとしても、学生は4年間で30曲前後のロシア語の歌を知ることになる。
私自身が「コール八幡坂」の活動を通じて、ロシアの歌100曲という宝をそれと知らぬ間に蓄えていたことになる。その宝物がどのような作用を及ぼすかについては、もちろん、人的交流における音楽の効用等について一般的な事を述べることはできるが、ここで私が語りたいのは、日常生活で口にされた何気ないロシア語のフレーズが一節のメロディーにのって頭の中で勝手に歌いだすという、魔法のような瞬間についてである。
学務課お知らせ
卒業試験日程
1.ロシア地域学科4年生は下記の日程で国家試験を行います。
国家試験 3月2日(月)
卒業論文審査会 3月3日(火)
2.ロシア語科2年生は下記期間内に卒業試験を行います。
3月2日(月)~3月6日(金)
ザチョットは、下記の日程で行います。
後期試験日程
1.ザチョット
2月23日(月)~2月27日(金)
2.エグザメン
3月 2日(月)~3月 6日(金)
3.再試期間
3月 9日(月)~3月13日(金)
卒業年次以外の学生にのみ、この期間に再試験を行うことがあります。
出席率不足の学生は
本校は出席率80%以上が期末試験の受験資格となっています。出席率が低かった学生は受験資格を得るため担当教員の指導を受けてください。
日本学生支援機構奨学金~継続願・適格認定説明会~
1月15日(木)14:40より、7番教室にて卒業年次以外の奨学生全員を対象に説明会を行います。
都合により参加できない学生は、説明会開始前までに事務局学務課に申し出てください。
この説明会に参加せず、継続願を提出しない学生は、新年度4月からの奨学金は貸与されません。
石館とみ奨学金審査会
3月12日(木)石館奨学金選考審査会を行います。この日の審査の対象となる学生は、3月9日(月)の教授会において奨学生候補生に選ばれ選考審査会へ推薦された学生です。候補生となった学生には、3月9日(月)夕方、本人へ通知しますので、学校が指定した日時に登校し、選考審査会と準備について、事務局で説明を受けてください。この説明会と選考審査会には学生本人が出席しなければなりません。
お知らせ
第17回はこだてロシアまつり
昨年に続き、2月11日(水・祝)11時~15時に開催します。まつりのテーマは「春の始まり」です。
最初に極東大函館校オリジナル版のマースレニッツァを楽しんでいただきます。寸劇や歌で賑やかに盛りあがり、最後は冬の象徴であるモレーナ(体長2メートルのわら人形)に火を放ち、寒く暗い冬に別れを告げます。
また屋内会場では、毎年好評をいただいているロシアのかわいい雑貨販売をはじめ、民族衣装試着体験、はじめてのロシア語教室や、学生コーラスグループ「コール八幡坂」によるステージショー、ヒントを見て学びながら答える「ロシアクイズ」などが予定されています。好評のロシアカフェでは、昨年同等、マースレニッツァには欠かせないロシア風クレープ「ブリヌィ」などをお出しする予定です(※チケット販売は11時30分より)。
ぜひ、みなさんお揃いでお越しください。
なお、当日は駐車場が使用できませんので、公共交通(市電・バス)をご利用ください。
卒業証書授与式等案内
平成26年度第20回卒業証書授与式は、次の通り挙行します。
○卒業証書授与式
日時:3月14日(土)午前10時
場所:本校3階講堂
○卒業式リハーサル
卒業式前日の13日(金)10時より講堂で行います。卒業予定者と送辞担当者は必ず出席してください。
○自治会主催 卒業生を送る会
14日(土)卒業式後、引き続き講堂で開催します。
○同窓会パーティー
14日(土)18:00より市内ホテルにて開催します。
※卒業式、自治会送別会、同窓会パーティーは、学生全員参加となっています。
各行事についての詳細は、掲示してお知らせしますので各々確認してください。
図書室より
平成26年1月から12月までの間、下記の方々から図書の寄贈をいただきました。
このほか、教職員・在校生からも多数寄贈されました。ありがとうございました。
寄贈者名(敬称略、五十音順)、図書名、冊数
・大森巳喜生(鹿児島県曽於市) デルスー・ウザーラ 1冊
・篠岡信(茅部郡鹿部町) ロシアのオリエンタリズムほか 3冊
・里憲(本校卒業生) アレクサンドルⅡ世暗殺(上・下)ほか 7冊
・長塚英雄(日ロ文化フェス日本組織委)ドラマチック・ロシアin JAPANⅢ 1冊
・船矢美幸(函館市湯川町)地域における国際化-函館をモデルに-ほか 2冊
短信
第7回АБВГ-Day
11月12日(水)ロシア語学習促進と発表の場としての言語まつりАБВГ‐Day(アー・ベー・ヴェー・ゲー・デー)が開催され、函館校の学生のほかに留学中のロシア人学生4名が参加しました。
第1部「個人発表部門」では、学生たちが日ごろ学習している言語(日本人学生はロシア語、ロシア人学生は日本語)で3分~5分ほど発表を行いました。形式は自由です。各々趣向を凝らした発表で、学習の成果を競いました。
第2部「チーム対抗部門」では日ロ混合3チームが編成され、チーム優勝を目指して、言語ゲームやロシア知識クイズで正解数を競いました。中でも、チームメイト5人でひとつの答えを導く5文字クイズ(1人1文字を答え、その回答をつなげて1つの答えにする)は大変盛り上がりました。1人が間違えると正解にならないため、珍解答が多発しました。しかし笑いながらも、この言葉はこういう意味だよと学生同士で教えあい、それもまた学習のひとつになっていました。
第2部終了後は、審査結果発表と表彰式がおこなわれ、「個人発表部門」上位入賞者、「チーム対抗部門」優勝チームには、それぞれ賞状と賞品が贈られました。
АБВГ—Day個人発表部門の上位入賞者は、次のとおりです。
第1位 ロシア地域学科1年 大平さん
一人芝居「誰も…」(作:準色大平)
第2位 ロシア語科2年 岡安さん
研究発表「ウラジオストク要塞の大砲」
第3位 ロシア地域学科4年 河瀬さん
読み聞かせ「3本の木」
(「世界の民話」より)
最優秀留学生賞
極東連邦総合大学日本学科3年
ネケシェワさん
発表「夢想の魅惑」
在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所長賞
ロシア地域学科1年 金子さん
発表「古(いにしえ)のポストカード」
本校開校20周年・函館日ロ親善協会設立25周年記念講演会
本校は、1992年に函館市とウラジオストク市が姉妹都市提携を結んだことを機に極東国立総合大学(当時)の分校として1994年4月開校しました。この20年間、多くの方々に支えられながら、本学ウラジオストクから派遣されたロシア人教員を中心とする教授陣がロシア語やロシア全般について教授する教育機関として、また日ロの交流拠点として一定の評価を受けるまでになりました。
12月20日(土)、本校開校20周年・函館日ロ親善協会設立25周年記念講演会を開催しました。記念講演に先立ち、本校同窓会長で函館日ロ親善協会事務局長の小柏哲史さんにより、ロシア極東連邦総合大学函館校の20年・函館日ロ親善協会の25年を画像とともに振り返りました。
記念講演は、元NHKモスクワ支局長で現在はフリージャーナリストとして活躍中の小林和男氏から「ロシアで学んだダメもと精神」と題し、お話いただきました。
東京外国語大学でロシア語を専攻することになったきっかけが、ジャーナリストを夢見て受験勉強に励んでいた1957年10月、ソ連による初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げにあったこと。大学時代は学生運動が盛んで、ロシア語は勉強不足のままNHKに入局。「一番若い特派員」としてモスクワに派遣され、現地でロシア語力を培っていくが、ソ連時代は直接人に会って取材をして記事を書くことはダメ。だが「ダメもと精神」で挑戦し、フルシチョフ元共産党書記長の葬儀の撮影に成功。その後もゴルバチョフ書記長や指揮者ゲルギエフ、さらにはプーチン大統領といった大物との単独対談を実現。こうしたエピソードが次々と紹介され、約240名が集う会場を大いに沸かせました。
続いて行われた祝賀会には、極東大学や函館日ロ親善協会に縁の深い人々が一堂に会しました。国際学園理事長であり、極東連邦総合大学副学長のクリーロフ・ウラジミルのあいさつに始まり、開校以来函館校の運営に際し多大なる協力をいただいた函館市へ本学からの感謝状が工藤壽樹市長に手渡されました。また、学校法人の理事として函館校の運営に長年尽力された前理事安島進氏、創設者の遺志を継いで石館とみ奨学金の提供を続けていただいている坂本欣也氏に本学と学校法人および函館校から、そして17年にわたり本校の発展に努めたイリイン・セルゲイ校長にはクリーロフ副学長から感謝状が贈呈されました。
祝賀ムードが高まる中、本学学長イワニェツ・セルゲイからのビデオレターが紹介され、続いて前在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所長で現在はロシア連邦外務省ウラジオストク代表部長を務めるブロワレツ氏、在日本ロシア連邦大使館リャボフ総領事、ファブリーチニコフ在札幌ロシア総領事からの祝辞等があり、開校20年・協会設立25年という大きな節目の年は、日ロ双方からの関係者を迎えながら盛大に祝われました。
アトラクションでもロシアゆかりの曲が披露され、函館市在住のソプラノ歌手引地桂子さんの歌と国立モスクワ音楽院で学ばれた高橋セリカさんのピアノにしばし魅せられました。
この場を借りて、函館校の開校および親善協会の設立以来、みなさまから頂戴したご厚情に対し、心よりお礼申し上げます。
学生からの寄稿
ウラジオストク留学報告
ロシア語科2年 酒井 星弥
9月4日から10月2日までの約1カ月間、ウラジオストクに留学しました。初めての海外ということで、とても心配していましたがトラブルも特に無く、無事帰路につくことができました。
ウラジオストクという街についていうと、函館よりも活気があり、人が多いと感じました。歴史的な建物もあり、坂も多いので雰囲気は函館と似ていると感じました。 個人的にはアルバート通りが一番好きです。
授業は、中国人、韓国人、日本人の約10人程度で構成されたグループに振り分けられました。彼らとは時間が経っていくごとに仲良くなっていき、とても楽しいグループで学ぶことができました。授業内容は、文法、会話、読解、ウラジオストクの歴史、映画を使ってのリスニングや単語、フレーズを覚えたりしました。私にとって一番良かった授業は文法です。今まで苦手だった時制についてよく理解できたと思います。先生方はロシア語をロシア語で説明するのですが、それはとても分かりやすいものでした。また、とても個性的であったことが印象深いです。忘れることは無いでしょう。
ウラジオストクに行って一番楽しかったこと、嬉しかったことは、函館に来たロシア人留学生たちと再び会えたことです。一人は、去年1カ月ほど函館に留学していたヴィカです。彼女は快く同級生を連れてきてくれて、街の案内もしてくれました。もう一人はウラジオストク本学の合唱団員として今年の2月、来函した際に知り合ったナースチャです。彼女も快く会ってくれて、ロシアの料理屋に行ったりスーパーで食材を一緒に選んでくれたりしました。ナースチャは日本語が話せないのでロシア語で会話するしかなく、これはとてもよい練習になりました。自分の話すロシア語に自信がもてました。
他にも会ったロシア人はとても親切で、ロシア人がより好きになりました。私のために時間を割いてくれて本当に嬉しかったし、感謝しています。
最後に、留学実習に行くに際して手助けをしていただいた事務の方々、奨学金をくださった日本たばこ産業株式会社の方々に感謝します。ありがとうございました。
ベラルーシ学生との交流
ロシア地域学科4年 河瀬 愛子
1858年、函館に赴任したゴシケヴィッチ氏(初代ロシア領事:ベラルーシ生まれ)の生誕200周年ということで、行事の一つとして、ベラルーシから日本語を学んでいる6人の学生が日本に来られた。函館では本校学生がロシアゆかりの場所を案内し、書道や着付けといった日本文化を一緒に体験した。
その後函館を離れ、9月29日から10月2日まで京都(金閣寺・銀閣寺・嵐山)・東京(浅草・東京タワー)を共に旅行させていただいた。京都では1人のベラルーシの女子学生とじっくりお話する機会が持て、とても有意義な時だった。語学を学ぶ者としての大変さや喜びなど、お互い共感できた。彼女は日本語で話し、私はロシア語で話すことで、学んできたことを生かすことができ嬉しく思った。
初めは「みんなで楽しんでこよう!」と思っていたが、だんだん「しっかりしなければ!」と考えるようになった。日本で使える携帯は全員が持っていたわけではなかったため、朝何時にどこに集合するか?何か伝え忘れた時や変更を知らせる時など、みんなのホテルの部屋番号を聞いておかなければならないことも教えられた。
一番ハラハラしたのは、品川駅で朝、本当に多くの通勤客で、私たち一行12人のうち、2人がはぐれてしまったことだ。その場の状況から、私が2人を探しに行くことになった。「はとバス」のガイドさんには「1つ目の行き先(皇居)で合流できなければ、その後、一緒に同行することはできないかもしれません」と言われた。どっちにしても、せっかく日本に来て、旅行の3日目が“ホテル” で居残りでは、あまりにも残念だと思い、駅構内を探した後、ホテルに帰った。そこで2人を発見した。その後、2つ目の行き先の“浅草”で合流でき、観光バスにも乗せていただく事ができた!
人との交流が何より楽しい旅行となったように思う。これからも、ハプニングに対する対処法を学びつつ、思い出を積んでいきたい。感謝まで。
△高田屋嘉兵衛像・日露友好の碑のある函館市宝来町グリーンベルトにて。
函館日ロ親善協会からのお知らせ
10~12月の主な活動実績
○10月31日(金)
ロシア極東大学留学生歓迎会
○11月14日(金)
ロシア極東大学留学生修了式・送別会
ロシア極東大学留学生支援実行委員会の招きにより、函館で日本語・日本文化の研修を受けていた留学生4名の歓迎会・送別会が開催されました。
○12月20日(土)
ロシア極東連邦総合大学開校20周年
函館日ロ親善協会設立25周年記念講演会&祝賀会
祝賀会出席:ご来賓・極東大学関係者・協会会員・在函ロシア人・ウクライナ人とご家族 計90名
会場:ロワジールホテル函館
今年は当協会設立25周年にあたる記念の年であり、またロシア極東連邦総合大学函館校の開校20周年でもありますことから、極東大函館校と共同で記念講演会と祝賀会を開催いたしました。
記念講演会に先立ち、当協会の25年を振り返る中で、2007年に松本会長が姉妹都市ユジノサハリンスク市を訪問した際の図書寄贈、2012年から3年続けて「はこだてグルメサーカス」に出店したことなどについてご報告させていただきました。
記念講演会や祝賀会の詳しい模様は本稿で上記紹介されているため割愛しますが、当協会の松本会長の挨拶で始まった祝賀会には、ロシア側の外務省関係者も多数お集まりいただき、お祝いの言葉を頂戴しました。この場を借りて御礼申し上げます。そして最後は兵頭理事の乾杯で閉会となりました。
≪係りより≫
昨年夏から秋にかけてロシア語での交流の機会が盛りだくさんでした。これに触発された学生たちは学習意欲を高め、日々勉学に励んでいます。(倉田)