教育の社会進歩
ロシア極東国立総合大学函館校 校長 イリイン・セルゲイ
20世紀は、人類の宇宙空間への進出や科学・物理学などの分野で偉大な発見があった世紀として歴史上に残るであろうが、それと同時に、二つの世界戦争が起こり、多くの残虐な革命が起こるなど大変動があった時代としても記憶される。そのほか、20世紀は世界中で文盲撲滅の世紀としても知られている。しかし今また、この問題はアメリカをはじめとする先進国にとって、かなり当面的な問題でもある。
長い間、旧ソ連は学者・医者・教師などのインテリ人が世界で一番多いことを誇っていた。ソビエトは1940年代には文盲人がほとんどいない社会であった。しかし、ソ連が崩壊した後、この問題が再び浮上した。原因はいくつか考えられる。一つは教育を含む様々な社会分野における国家予算の不足。それはまず最初に、学校から若い教師の流出を呼び起こした。そしてもちろん、優秀な教師の不足は教育全体の水準に多大なる悪影響を与えた。さらに生活水準の低下が、教育にも悪影響を与えた。多くの家庭で、特に田舎で経済的理由から子供を学校に行かせる余裕がなくなったのだ。
現在ロシアには、この問題が特にカタストロフィー的な規模となっている地域が何カ所かある。例えばチェチェン共和国。長年に渡り戦争が続き、子供を学校に行かせる余裕がない。そして読むこともできない、書くこともできない世代を育ててしまう。
そのほか最近ロシアにはもう一つの大きな問題が起こった。それは見捨てられた、完全に教育を受けることのできない浮浪児の問題だ。つまり文盲というのはいわゆる「社会の病気」だと言えるであろう。ただし、これは疫病を予防するように短期間で局限することができるものではないと考える。文盲というのは常に予防し、注意を払わなければならない、重い長患いのようなものだと思う。そしてそれは現在のロシアにも見られる。このような世の中で、将来のノーベル賞受賞者、あるいは新しいトルストイ、ノボーコフなどを育てることが出来るのだろうか。
21世紀において社会の進歩は、各国としても世界全体でも、前世紀以上に教育の水準にかかっていると私は確信している。つまり、現在の子供の教育水準が21世紀の経済・社会発展を定めることになると思う。今世紀は前世紀のようには自然資源の利用に対する期待はできないので、新しい技術の需要が高まるだろう。そして新しい国際関係を作り出すために、新しい思想や様々な国際問題に対する新しいアプローチが必要になるだろう。
社会における教育水準が国際関係に直接関わるのだろうか。先生が教え子にただ自分の知識を伝えた、前世紀の教育の定石である教授法と違い、現在の教育の基盤は情報だと言われている。情報の欠如、あるいはその不足が国際問題を含め多くの問題解決を妨げると思う。
例えば「北方領土問題」。この問題について、ロシア人と日本人は何を知っているか。もし両国でこのことについて世論調査を行えば、日本とロシアにとってとても当面的なこの問題についての知識が非常に少ないことは明らかであろう。日本では多くの人が、この問題が両国間に存在することを知っているかもしれないが、問題の詳しい内容についてまでは(特に若者は)あまり知らないと私は確信している。
両国の人々がこの問題についてもっと多く、もっと詳しく知れば、よりたやすく解決することができると思う。しかし、これは教育水準によると考える。これも教育が国際関係においてどのような役割を果たすことができるか、という一つの例である。両国の国民はお互いについて何を知っているか。多くの日本人はロシアが地理的に一番近い外国だということさえ知らないと思う。それは地理学の知識不足の問題か、または政治の問題か。「ロシア」、「日本」という言葉を聞くと、ロシア人と日本人の記憶にどんなイメージが浮かぶのか。ウオッカ、サケ、トロイカ、リキシャ…。けれども、現在の若者の間では、日本とロシアにはショーロホフ、パステルナーク、大江健三郎、川端康成などのノーベル賞受賞者がいたことは思い出されないであろう。これも文学の知識の欠落ではないだろうか。このような例がほかにもたくさんあると考えられる。
21世紀の教育はどのように発展するのだろうか。今世紀の教育は国際化とグローバライゼーションの道を歩むことになると思う。国と国との文化の相互理解なしで、平和的・調和的国際社会を築くことはできない。このような国際社会の創出には教育が決定的な役割を果たすに違いない。
日本とロシアの教育にはまだ解決していない複雑な問題がたくさんあると思う。ロシアにとってそれは、まず第一に教育予算の不足(ロシア人教師の給料は他の職業に比べて一番低い)。日本にとっての大きな問題は学校で与えられる知識があまり深くないということ。しかし、両方の教育制度には多くのプラス面もあると考えられる。だからこそ、両国の教育において国際協力が必要なのだ。
このような協力のパターンも存在している。それは、ロシア極東国立総合大学函館校。当大学では、すでに日本の教育を受けた日本人の学生がロシア人教師の指導の下でロシアの文学・歴史・言語・経済などを勉強している。日本とロシアにとってそれは、教育分野における最初の両国協力のパターンである。
当大学を卒業した160人以上の日本人の若者たちは、様々な日ロ関係の分野において、近い将来、いろいろな問題を解決することのできる、広い知識を持った新しい世代の人間になると確信している。国際的な教育を受けているこのような世代が、将来性を持った人間となるに違いない。
*イリイン校長はこのたびロシア政府より教育功労者賞を受賞しました。
ロシア語市民講座のお知らせ
今年も5月8日(月)よりロシア語市民講座が始まります。
入門・初級・中級・上級の4コースがあり、各コースとも定員は10名です。
毎週月曜日(祝祭日の場合は翌日)午後6時30分から8時まで、前期12回24,000円、中期12回24,000円、後期10回20,000円の全34回68,000円ですが、学生の方は割引もあります。
本校所定用紙で4月28日(金)までお申し込みください。
詳しくは本校事務局までお問い合せください。 TEL 0138-26-6523
はこだてベリョースカクラブ
ベリョースカクラブは、毎回違った角度からロシアについての話題を提供し、ロシアへの理解を深めていただくため開催しているもので、今年で8年目になります。
5月22日、 6月19日、 7月24日、
9月25日、10月23日、11月20日、
2月19日の午後3時から1時間、ロシアの楽しい話題を日本語で気軽に聞く事ができます。年会費は3,000円、4月28日までにお申し込みください。
なお、お申し込み多数の場合は、初めての方を優先させていただきます。
人事
事務局がかわります
この度、小笠原聡次長が2年間の研修期間を終え、函館市役所に戻ることになりました。事務局の業務はもちろんのこと法人経営、学校経営の全般にわたり目を配り、円滑な推進に努められました。また、常に学生の動向に心を配り、多忙な中にあっても時間を割き、日常の生活から進路にいたる幅広い相談にのり、よき兄貴分として慕われました。本当にお疲れ様でした。市役所に戻ってからも益々のご活躍を期待しますとともに、今後も本校のよき理解者としてサポートしていただくことをお願いします。
新しい次長には、市企画部計画調整課より中村勇人さんが着任します。前次長同様の活躍が期待されます。
再試験日程
再試験の手続きをして下さい
前年度の不合格科目のある学生を対象に4月12日(水)から4月26日(水)まで再試験期間を設けます。
前年度分の再試験を受けることになるので、1科目1回につき再試験料1,000円を添え、再試験願を事務局に提出してください。その後、担当教員から試験日時の指示があります。
なお、この期間中に合格できない場合は留年が確定します。その場合、前年度と同一学年を履修する事になります。
留学実習説明会
パスポートの取得は早めに
9月にウラジオストクへ留学予定のロシア地域学科3年生を対象とする第1回留学実習説明会を5月18日(木)午後2時40分から第7教室で行います。
第1回説明会では、留学実習の日程、留学時の注意事項、準備の手順などをお知らせします。
また、第2回説明会ではパスポートが必要です。パスポートは6月初旬までに取得しておいてください。
なお、第2回説明会については後日掲示します。
学生課よりお知らせ
校舎の利用時間
本校の校舎を利用できる時間は、月曜日から金曜日までの午前8時30分から午後5時までです。この時間外に校舎を利用したいときは、事務局に事前に申し出て許可を受けてください。
掲示板について
学生への各種お知らせは校内掲示板への掲示によって行われます。各自、掲示板を見て連絡事項を確認してください。
欠席した学生は
・本校では、出席率80%以上が期末試験の受験資格となっています。授業を欠席した学生は、各自で担当教員へ補習授業を申込んで補習指導を受け、欠席分の遅れを取り戻しておく必要があります。
・授業を欠席する場合は、事務局へ事前に欠席届を提出しなければなりません。
事前の届出ができない時は、まず電話で事務局学生係へ連絡し、その後、登校日に正式に届出をしてください。
進路相談
個人面談の実施
ロシア語科2年生とロシア地域学科4年生を対象に進路についての個別面談を行います。
日時は4月中旬から5月中旬の放課後の予定で、学生係の掲示板に掲示します。
求人情報については、今年度も、掲示板や図書室の所定のコーナーを使って提供します。見落としのないようにしてください。
奨学金
奨学生募集説明会
日本学生支援機構の奨学生を募集します。4月20日(木)午後2時40分から第6教室で説明会を行いますので、希望者は出席してください。
この日都合で出席できない学生は前日までに事務局学生係へ申し出てください。
予約進学者は
本校入学前に奨学生採用候補者に決定している新入生は、進学届・確認書・振込口座届を4月14日(金)までに事務局学生係に提出してください。
短信
第11回ロシア語弁論大会開催
2月17日(金)に第11回ロシア語弁論大会とマースレニッツァを開催しました。
今年で11回目を数える弁論大会は、内容を一新、審査方法や賞品も変わり、参加者も過去最多の23名と賑やかに行われました。本校学生のほか、研修中の税関職員、北海道教育委員会研修生(道立高校教員長期研修生)の方々も出場し、審査は在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所ウソフ・アレクセイ所長、函館市企画部国際課倉田有佳主査、本校教授パドスーシヌイ・ワレリーが行いました。
今年は、暗唱の部、弁論の部に分かれ、日頃の学習成果を競い合いました。今年新設された暗唱の部は、本校1年生を対象とし、与えられた2つの課題のうち、ひとつを選び暗唱しました。
弁論の部では、税関研修生・本校生・一般の部に分かれました。まず、税関の部では、研修生のみなさんが自分の仕事や勤務地について3分間の発表を行いました。本校学生の部では4分間の弁論を行い、「アムールトラについて」というテーマで環境保護について発表した清水正司さんが1年生ながら見事優勝を果たしました。また昨年の優勝者、ロシア地域学科3年久田賢明さんは、紙芝居的に絵を示しながらのユニークな発表で2位、聴衆賞も獲得し面目を施しました。一般の部では、道教委研修生の遠藤雅公さんが、「ロシアはプラスかマイナスか」と題し、ウラジオストク留学中の心情の変化を綴り、優勝しました。
各賞受賞者は下記のとおり、入賞者の発表原稿は本校のホームページでご覧いただけます。
〈第11回ロシア語弁論大会結果〉
暗唱の部(本校1年生対象)
第1位 小林真実(ロシア語科1年)
第2位 荒木梨馨(ロシア語科1年)
第3位 今成 愛(ロシア語科1年)
弁論の部(本校生)
第1位 清水正司(ロシア地域学科1年)
第2位 久田賢明(ロシア地域学科3年)
第3位 林江里子(ロシア地域学科1年)
弁論の部(税関研修生)
第1位 中野弘志(横浜税関)
第2位 小野晃義(稚内税関支署)
第3位 軒名 潤(根室税関支署)
弁論の部(一般)
第1位 遠藤雅公(道教委研修生)
聴衆賞 久田賢明(ロシア地域学科3年)
春よ来い!マースレニッツァ
弁論大会終了後、午後からは厳しい冬を追い払い暖かな春を待ち望むロシアの伝統行事である「マースレニッツア」を行いました。
前夜から荒天で実施が危ぶまれましたが、午後になってやや風もおさまり、寒さに耐えながら祭りを楽しみました。
まず、冬を謳歌する鬼に扮した学生たちが、冬の象徴である女性のワラ人形「モレーナ」を担ぎ出し大暴れ。そこへ「太陽」と春の神「ヤリロー」が現れ、春の到来を告げます。コーラスグループ「コール八幡坂」がマースレニッツアの歌をうたい、大いに盛り上がる中、「モレーナ」に火がくべられると冬の象徴は天高く燃え尽きました。
この後、太陽に見立てた、マースレニッツァには欠かせないブリヌイ(ロシア風クレープ)や、シャシリク(串焼肉)、コンポート(温かい果物の飲み物)、シー(キャベツや麦の入ったスープ)などで体を温めました。
普段は口にできないロシア料理に舌鼓を打ちながら、みんなで春の到来を祈願しました。
卒業生からの投稿
Здравствуйте
ロシア地域学科 谷中 めぐみ
この大学で過ごした4年間は、とても充実した日々だった。特に、最後の1年間は、忘れられない時になるだろう。
入学後の3年間は、決して良い学生と言える状態ではなかった。でも、4年生になって大きく変わった。とりわけ、ロシア語に対する気持ちが。ロシア語って素敵だ、ロシア語を勉強するって楽しいと心から思えるようになった。それは、最後の1年ということもあったが、アルバイト先でのロシア人との出会いによるところが大きい。
彼らは、船の修理に函館に来ていた。以前、「船員には気を付けなさい。」と言われていたので、出会った当初は、身構えていた。しかし、毎日、アルバイト先に来るようになり、買い物のお手伝いを
しているうちにすっかり打ち解け、彼らと話をするのが楽しみになってきた。彼らと会話を重ねる中で、家族に対する思いや物事に対する見方や考え方を知り、心の温かさや深さを感じた。その時、あらためて、ロシア人って素敵だなと思うと同時にロシア語を学ぶ喜びを実感した。彼らとの会話を通して新しい単語やフレーズに出会ったり、授業で覚えた単語が思ってもいなかった使われ方されたりすることを知った。いつしか彼らと会話することにワクワク感を覚えるようになった。彼らとの出会いが、ロシア語の魅力を再発見するきっかけとなった。遠く故郷福井を離れてこの学校で学んだことを誇りに思うし、ロシア語の基礎を作ってくださった先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。学校のお力添えで、函館に就職先も見つかり、しかも仕事の一部はロシア語に関係するので、心新たに精進していきたいと考えている。また、人との出会いを大切に、他から謙虚に学び、1年1年成長していきたい。4年間、皆さんありがとうございました。
シュリーマン、レインマン、ピーター・フランクル
ロシア語科 水野 武
私が、本学で学んだことが三つある。第一に、シュリーマンのように、いろいろな言葉を知っていると、いろいろと役に立つことがあるということ。
サンキュー・ベリマッチ、メルシー・ボークー、ダンケ・シェーン、ムーチャス・グラシアス、ムイント・プラジール、
グラッツェ、サワッディー・クラ、エフハリスト。
第二に、レインマンのように、いろいろなテクストを憶えていると、いろいろと役に立つことがあるということ。「きみはひじょうに純粋な人間だ。それはきみの美点であり、欠点でもある」、「この人生の変化も、魅力も、美しさも、どれもみんな、光と影からできている」、「この研究の楽しみは真理の発見にあるのじゃなくて、その探求にある」。以上、レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ著『アンナ・カレーニナ』より。
第三に、ピーター・フランクルのように、いろいろな芸を身に付けていると、いろいろと役に立つことがあるということ。ギターやピアノが弾けたり、料理が上手だったり、笑顔がとてもすてきだったり。
そして最後に、ボリシォーエ・スパシーバ。みなさんには、函館で、そしてウラジオストクでたいへんお世話になりました。とても感謝しています。また、お会いするその日まで。ダスビダーニャ。
フシボー・ドーブラバ。
4年間
ロシア地域学科 古澤 昇子
4年前初めて顔を合わせたクラスメイトの皆さんは、数多くの外国語の中からロシア語という言語を選び取り、学ぶことを決めただけあって皆少々風変わりでした。年齢も様々でしたが、それよりも持っている個性というかキャラクターが、見事なほど誰もが誰とも被っていないし、こんなバラエティー豊かなクラスメイトを持ったことは一度も無かったし、これから二度と持つことはないと思われます。彼らの一言一言が新鮮で、時には日本人同士なのにカルチャーショックを受けたこともしばしばでした。
築数十年のクラシカルな校舎は、雨の日だと水浸し、風の強い日は隙間から風が吹き込むなどドキドキさせられる要素が満載で、ある意味一種のアトラクションのようでした。教室の様子を思い浮かべると、誰がどこの席に座っていたか、先生の黒板の前に立つ様子などを思い出す事ができます。また、ひとつひとつの授業で感じた新鮮さや楽しさ、全くわからなくて込み上げる苦々しさや、宿題を忘れたときの胃を締め付けられるような感じなどを、鮮明に思い出す事ができます。ちなみに、私は、6番教室が一番好きでした。たまにちょっとトイレ臭かったですが。
普通の大学とは一味違った独特の雰囲気の校舎と学生、普通の学生じゃ味わえないすばらしいことがある一方で、普通の学生じゃ味わないような悩みもあったように思います。そんな中で、皆それぞれが、それぞれの考え方のもとに個性豊かに過ごしていたことを知っています。
4年間苦楽を共にしたクラスメイトの皆さんの行き先が、穏やかで幸福であることを祈っています。4年間にわたりご指導くださった先生方、事務局の皆さんには本当に感謝しています。ルーズだしあまり良い学生ではありませんでしたが、私なりに多くのことを学ぶことができました。本当にありがとうございました。
学生生活を終えて
ロシア地域学科 板橋 史展
私にとっての大学生活は思った以上に大変でした。毎日のように同じような事の繰り返しで、何度も辞めたいと思いました。しかし、いざ卒業を迎えるとなると寂しい思いで一杯になりました。学校全体でも非常に少ない人数だけに、まるで皆が家族のようでした。今となっては函館での大学生活が無性に恋しいです。
学校のお陰で就職もでき、現在は札幌に居ります。幸いにして就職先がロシアに建設機械を輸出している会社で、買い手が全てロシアなので、ロシア語を使っての営業機会が多いです。極東大学で学んだロシア語を最大限活かせているので、楽しい毎日を送れています。特に、極東大学で、語学だけでなくロシアに関する全ての事を学ぶことができたことが、仕事をする上での大きな自信となっております。本当に極東大学で学べたことに感謝しております。今後も、学校での経験を忘れずに頑張っていこうと思っております。仕事などで函館に立ち寄ることになったら必ず会いに行きます。後輩たちの活躍を期待します。私も負けずに努力していきます。
くもりのち晴れ
ロシア地域学科 茂木 知佳
「こんな大学なんて大嫌いだ!」予習や宿題に追われる毎日が高校の延長に感じた。「大学には楽しいことが待っている」と思いながら受験勉強に励む高校生活を送ったものの、イメージしていた生活とは全く違い、入学してすぐに大学が嫌いになった。何をしても「嫌だ」という気持ちは変わらず、ロシア地域学科からロシア語科に転科し2年間で卒業することにした。それでも苦痛の毎日で、私は苦痛から逃れるように卒業式をむかえた。しかし、その卒業式が私の考えを変えるきっかけとなった。私はそれまでの2年間、大学のイベントには非協力的で、日常生活でも特定の友人以外とはほとんど話もしなかった。大学よりも日用品店でのレジのアルバイトに楽しさを感じていた。でも、在校生が卒業生ひとりひとりに手作りの卒業アルバムを製作してくれたり、式ではこんな私にメッセージを寄せてくれたりと、温かく送り出してくれた姿を見て、今までの自分の大学に対する態度が恥ずかしくなった。そして、大好きなロシア語を学びたいという気持ちで入学したにもかかわらず、「大学が嫌いだ」という理由だけで卒業してしまっていいのか、と自問自答する日々が続いた。
結局、私は、「ロシア語を学び続けたい!」という気持ちが日増しに強まり、ロシア地域学科の3年に編入し、もう一度この学校に通うことに決めた。そう決意した私は、それまでの大学での行動や大学に対する考えをガラリと変えた。翌年の卒業式には、私に大学の大切さと温かさを気づかせてくれた後輩を送り出す番になり、自分がしてもらった以上のことをしてさしあげたいと思いできる限りの事をした。
また、以前は、有名な大学に比べ歴史が浅く学生数も少ない自分の大学は知名度も高くないためデメリットを感じていた。でも、「知名度が高くない大学だからこそ、自分たちが積極的に行動して結果を出すことによって、社会に認められるとう可能性に満ちているのではないか。」と発想を転換し、前向きに過ごした。「今の状況をどう楽しもうか」と過ごした2年間は充実していて、あっという間に過ぎてしまった。考え方を変えるとこんなに生活が変わるものなのかをはじめて知った。
学校のお力添えで希望の職を得る事ができた。感謝の気持ちで一杯である。これからどんな試練が待っているかわからない。たくさんの壁にぶつかることになるだろう。しかし、私は、大学4年間の経験を活かせば乗り越えていけると思っている。たくさんの教えをいただいた事に心より感謝いたします。ありがとうございました。
日ロ親善協会からのお知らせ
長かった冬もようやく終わりを告げようとしているなか、会員の皆様はいかがお過ごしでしょうか。新年度を迎えるにあたり、今年も様々な活動に取り組んで生きたいと役員をはじめ事務局も事業計画を作成中であります。
会員の皆様には、5月上旬開催予定の総会のなかでお示しできると考えております。桜咲く頃、皆様にお会いできることを楽しみにいたしております。
≪係りより≫
○ 皆さんのご協力により予定通り 今年度の第1号(通算47号)を発行することができました。ありがとうございました。
○ 今年も全国各地から精鋭を迎えてのスタートです。目指すは、"ロシアに精通したスペシャリスト"。目標に向かって心新たに、力強い一歩を踏み出していただきたい。
○ 次号の発行予定は7月です。皆さんの投稿をお待ちいたしております。(小笠原)