清酒とウオツカ
ロシア極東国立総合大学函館校 事務局総務課長 宮永 敏明
下戸の人には申し訳ないが、お酒を飲めてよかったなと思う。それはなにも、ロシアと付き合っているからだけではないが、ロシアの歴史と切っても切れない国教の選択に、酒が絡んでいたことは有名な話だ。
しかし日本もヤマタノオロチを酔っぱらわせて退治した伝説があるくらいだから、両国ともかなり酒好きな人々によって築かれてきたに違いない。
酒はその国の主要農作物を原料とし、その土地の歴史と風土を反映する場合が多い。ヨーロッパ諸国はブドウでワインを造り、イギリスは麦からウイスキーを、アメリカはトウモロコシからバーボンを、ロシアは穀類からウオツカを、そして日本は米から清酒を造り出した。
その国を代表する酒が、国民性を表すともいわれる。清酒は米をアルコール発酵させて濾過した醸造酒で、アルコール度数は低く、米の風味は酒に残っている。
これに対してウオツカは、いったん発酵させたものをさらに煮詰めてアルコール度数を高め、炭で濾過して原料の「残り香」を取り除いてしまう蒸留酒で、両者は全く性格が違うし、その他にも世界中の国が独特の「国民酒」を持っている。
では「清酒の国の住人」と「ウオツカの国の住人」は、良い友達になれるのだろうか。
普通、酒好きの人は、いとも簡単に「どんな酒だろうが、酒好きの国の住人は、良い飲み仲間になれる」と答えるのである。
しかし同じ酒飲みでも、好む酒が違えば、酔っ払い方も違うのではないだろうか。清酒はゆっくり口に含んで飲みほすが、ウオツカはほとんど喉に放り込むように飲む。清酒の酔い方は緩やかだが、ウオツカは直ちに効いてくる。清酒は薄味の食べ物によく合うが、ウオツカは濃厚な味の食べ物がぴったりする…などなど。
ただし、これは酔っ払い方や酔い心地とは違う。酒の違いには、その国の風土や歴史が反映されるが、アルコール度数の高い蒸留酒を好む国民は荒っぽく、度数の低い醸造酒を好む国民は温和なのかと言うと、決してそんなことはない。また清酒を飲んだ人は穏やかに酔い、ウオツカを飲むと気が荒くなるわけではないし、逆に清酒だと隣の人にからみたくなり、ウオツカなら肩を組んで歌いたくなるわけでもない。
で、はじめの質問に戻ろう。「清酒の国の住人」と「ウオツカの国の住人」は、良い友達になれるのだろうか。個人的な結論から言えば、その国の酒をうまいと感じたら、友人になりやすい。しかし困ったことに、僕はどの酒を飲んでも、まずいと思ったことはほとんどないのだ。
ただ、飲んで友達になれる相手は、飲まなくてもいずれは友人になるし、酔って口論した相手とは、しらふでもいつかは衝突する。清酒であろうがウオツカであろうが、酒は、その人がもともと持っている性質や、願望があらわになりやすくし、自分という他人も含めて、「人」との関係を濃密にする。そこで、酒を酌み交わすと、より親しみが増すことはよくあるが、反対に相手の嫌な面も見えてくるわけだ。
というわけで、下戸の人も、心配することは何もない。僕が「お酒を飲めてよかったな」と思うのは、酔うたびに「こんな気分は飲めない人には分かるまい」という理由のない優越感で、飲み仲間とクダを巻けるからにすぎないのだから。
人事
3月31日付で事務局の太田良子さんが退職、4月1日付で植松直さんが非常勤講師に着任しました。太田さんは本校開校前から準備に携わり、なにくれとなく学生や先生方の世話をしてくれた方です。4年制の「法学入門」を担当する植松さんは、函館弁護士会所属の若手弁護士。学生の皆さんとも年齢が近く、いきのいい授業が期待されています。
庶務
後期授業料の納入期限は9月15日(金曜日)です。
自治会
2000年度の本校自治会新役員が、6月22日に開かれた学生総会で決まりました。総会ではこの他、学生生活に元気を取り戻すためのいろいろなアイデアが話し合われ、できるものから取り組むことになりました。またしばらく使われていなかった自治会室、サークル室が新役員の手でリニューアルされ、再び利用できるようになりました。
新役員は次の通り。()内は所属クラス。
▽ 会長 片瀬 朋(421)
▽ 副会長 桑原 章憲(221)、福井 眞治(211)
▽ 書記 中村 公一(221)、池田 有希(211)
▽ 会計 金谷 和之(421)、新村 聡(411)、佐渡原 久美子(411)
▽ 監事 吉崎 花野子(431)、三井 慎司(421)、大栗 絵美(222)
前期試験日程
前期試験は7月17日から始まります。17-21日が「Зачет週間」、24日-8月4日が「Сессия(Экзамен期間)」です。各科目の試験日程は掲示板に張り出しますので注意を。1年生の皆さんは、ЗачетとЭкзаменの違いについて、入学時のガイダンスを思い出してください。
試験期間中は、先生たちが試験結果を記載してサインする「Зачетная Книжка」が必要です。1年生には試験期間が始まる前に配布するので忘れないでください。
※ しかし、授業にきちんと出席していないと試験を受けられません。最近、無断欠席が増えていますが、やむを得ず休む場合は、必ず届出を出し、授業に遅れた分は補習などで取り返す努力をしてください。
授業アンケート
前期の授業内容について、学生の皆さんの意見を聞く「授業アンケート調査」を行います。「あの授業は、もっとこうしてくれれば分かりやすいのに」など、受ける側からの要望を率直に記載することで、より良い授業にしていきましょう。調査票は7月17日ごろ配布します。思っていることを記入して7月28日までに提出してください。
健康診断結果
健康診断の結果が出ているので、学生の皆さんは各自、事務局に取りにきてください。検査で「要精検」など再検査が必要とされた人は、すみやかに受診して、結果を事務局に提出してください。
留学説明会
3年生のウラジオストク本学への留学実習は9月に行われますが、事前説明会を7月21日(金曜日)午後2時40分から、第3教室で行います。当日は現地事情の説明や諸手続きなどを説明するので、参加する学生は「実習のしおり」と海外旅行傷害保険申込書、保険料を持参してください。
就職活動
今年の就職戦線は昨年に比べて、様変わりしています。昨年はほとんどなかった求人票が、少ないとはいえ送られてきているほか、「ロシア語のできる人材を」と直接、本校に求人を申し込んでくる企業があること、貿易関連だけでなく基盤整備にかかわる企業が求人をしてきていることなどは、日ロ双方の経済状況が安定または好転してきていることを示しているのではないでしょうか。
学生の皆さんがロシア語を選択した動機が何であれ、いずれ実社会に出てロシア語を生かしたり、その力を求められたりする機会があるはずです。
1年生の皆さんも企業の求人情報には関心を持ってください。求人票は2階図書室前の掲示板に張り出してあります。
また企業訪問や内定など就職活動の状況は、できるだけ詳しく事務局に報告してください。
図書室から
夏期休暇(8月5日-9月17日)の期間中は、図書の貸し出し期間が延長されます。貸し出し期間は7月17日(月曜日)から9月18日(月曜日)です。
4-6月の主な寄贈図書と寄贈者および購入図書は次の通りです。
- 博友社ロシア語辞典ほか約800冊=末澤 昌二さん
- 橋をかける(美智子皇后著)=ショディエフ財団
- Церковь и Духовное Возрождение(ロシア正教会)=アレクシー2世総主教
- 新版ロシア文学案内2冊=購入
- Глаглы Движения в Русском Языке=購入
出来事
ロシア正教会総主教が本校訪問
実質的なロシアの国教とされるロシア正教の最高指導者、アレクシー2世総主教が5月12日、本校に立ち寄られました。
学生・教員らと歓談した総主教は「ここであなた方がロシア語やロシアの文化などを学ぶことが、日ロ関係を飛躍させるのです」とエールを送っただけでなく、その後、東京で天皇陛下と会見した際も本校を話題にするなど、本校にとって「歴史的訪問」になりました。
アレクシーⅡ世総主教は、約140年前、初めて日本にロシア正教を伝道したニコライ宣教師の足跡をたどり、初来日の第一歩を記す地として函館を選びました。
函館ハリストス正教会に続いて本校を訪れた総主教は、正面玄関で民族衣装に身を包んだ吉田奈緒子さん(ロシア地域学科2年)の「フレップ・ソリ」に迎えられ、工藤久栄さん(ロシア言語文学科4年)がロシア語で歓迎すると、「じょうずですね。ロシア語を何年勉強しているの?」と感心した表情。
食堂に設けられた歓迎会場では、吉崎花野子さん(ロシア言語文学科3年)と五嶋慶太さん(同)の二人が、ロシア語で書いた手紙を総主教に手渡しました。手紙の内容は、本校訪問に対する感謝とともに、プーチン大統領に函館来訪を働きかけてもらいたい-というものです。
総主教は日本滞在中の5月17日、皇居・宮殿で天皇陛下と会見されました。席上、天皇陛下が「総主教を迎えて日ロの友好関係が一層発展することを喜ばしく思います」と述べたのに対して、総主教は美智子皇后の講演「橋をかける」を読み、「人々の心に橋を懸けるという点に感銘を受けた」と話し、さらに本校でロシア語を学ぶ学生たちと触れ合ったことを紹介し、「これが日ロ両国に橋をかけることになる」と強調してくださいました。
ロシア人留学生
7月には2回、サハリンからの研修生が本校を訪れる予定です。はじめはサハリン国立総合大学で日本語を学ぶ学生と指導教員の計20人(男性5人、女性15人)が、7月5日に空路、函館へ入り15日まで滞在して、本校で日本語に磨きをかけたり日本の文化に接します。ロシア人学生たちは2年から4年間の日本語学習経験がありますから、昼食時や夕方の自由時間などに話し相手をして友達になれば、お互いに語学の良い練習になるはずです。
また24-26日には、サハリンの保母さんたち15人程度も来函する予定です。
このほか、国際交流センターには6月下旬から8月中旬まで、世界中から約60人の学生が日本語と日本文化を学びにやってきます。こちらは英語が中心なので、しっかり交流してください。
未来大とチェス大会
7月20日(祝日「海の日」)午後1時半から、八幡坂中腹の「ペンション坂のうえ」で、公立はこだて未来大学と本校対抗の「イリイン・カップ争奪チェス大会」が開かれます。
函館国際ショーギサークルを主宰する高佐一義さんの発案で、3月に校内で開催した大会が、対抗戦に発展しました。未来大学には「ゲーム理論」担当の教員がインターネットで外国のチェス愛好家と対戦するなど、チェス熱が高まっているとか。腕に覚えのある学生は事務局まで出場を申し出てください。会場では初心者に対する競技の指導も行います。
自前ホームページ
本校はこれまで、函館市役所のインターネット・ホームページに「付属」してサイトを開いていましたが、この春、晴れて独立したページを開設しました。従来のものと同様に、学長あいさつや教員紹介、カリキュラム、留学制度の紹介などを掲載しているほか、「ニュース」「フォーラム」「リンク」を新設しました。全体のデザインはデルカーチ先生です。
「ニュース」には、できるだけ新しい出来事を掲載していくつもりです。これまでのところ「市民講座開設」や「第一回イリイン杯チェス大会」に加えて「ロシア正教会総主教来校」の模様が写真つきで紹介されています。
「フォーラム」は、まだ自前のものがないため、無料でフォーラムを提供するアメリカのサイトに転送しているので、操作がすべて英語表示になっています。ちょっと使いづらいけど、慣れれば簡単。
「リンク」はウラジオストクの本学につながります。皆さんが留学してお世話になる「ルースカヤ・シコーラ」など本学のさまざまなページをのぞいたり、ロシアの大学間ネットワーク「RUNNET」に入ることもできます。
ただ6月末現在、ホームページはまだ全面的には完成していません。ホームページはこれからも、皆さんの意見を聞いてどんどん新しくしていくつもりです。
皆さんの中に、インターネット技術に詳しい人、こんなものをつくったんだけど、という人がいたら、どしどし協力を申し出てください。
URLは
「http://www2.hotweb.or.jp/fesu」です。
お知らせ
講演会「アフリカへの扉」
北海道アフリカネットワーク主催の講演会「アフリカへの扉-独立20年目のジンバブエ」が7月5日午後6時半から、函館市芸術ホールで開かれます。
レゲエ音楽に魅せられてジンバブエに移住し現在、現地で音楽プロダクション「ジャナグル・ミュージック」の代表を務める高橋朋子さんを迎えて、スライドと音楽を交えながら「ジンバブエの今」を紹介します。
入場料は500円。問い合わせは鳥飼やよい先生まで。
レクイエム演奏会
函館MB混声合唱団の創立30周年記念演奏会が7月15日午後6時から、函館市民会館で開かれます。
演奏曲目はヴェルディの「レクイエム」全曲、共演は函館市民オーケストラです。数あるレクイエム(鎮魂歌)の中でも最も大がかりなため、市民合唱団レベルとしては国内で演奏例がないそうです。今回、MB合唱団と旭川、弘前の合唱団に市民応募を加えて総勢180人がステージに上がります。
本校事務局の山名康恵さんも合唱団の一員として出演します。
≪係りより≫
今回から、学報を担当することになりました。まだ「Word」の操作に不慣れなので、きれいなレイアウトになりません。発行は年間4回。皆さんの投稿も歓迎します。(宮永)