No.89 2016.10"Миллион звезд" ミリオン・ズビョースト/百万の星

2016 ウラジオストク

ロシア極東連邦総合大学函館校 准教授 イリイナ・タチヤーナ

8月、私は例年どおり、故郷であるウラジオストクに行ってきました。ただし、滞在中の過ごし方は、いつもと大きく異なりました。例年であれは、海で泳いだり、友人とコンサートや観劇に出かけるなど、活動的な時間を送るのですが、今年は、下の息子家族が、アパートのフラットの修理にかかりっきりになるため、孫娘のサーシャを預かることになったからです。
我が家でのサーシャは、7時には私をたたき起こし、ここから長くあわただしい一日が始まります。
息子夫婦は、水で戻す乾燥食品を離乳食として与えることが多いのですが、私はそれを不満に思っていました。そのため私は、牛乳で煮たカーシャ(粥)、ボルシチ(ロシアの代表的なスープ)、を作り、肉を焼いてあげました。
毎日は、孫のご機嫌次第です。初めのうち、サーシャは、理想的にふるまい、私の言うことをきいていました。抱っこする必要もなく自然に寝入り、だだをこねることもありませんでした。おもちゃには関心が薄く、鍵、リモコン、電話などで遊ぶのが好きです。
二人でアパートのバルコニーに出て、6つも昇降口のある横長の9階建てアパートの住人の様子を眺めていました。アパートの各昇降口にはベンチが置かれており、その上には木々が茂っています。あるベンチでは、年配の女性たちが座っておしゃべりを楽しみ、別のベンチには若いお母さんがベビーカーを横に置いて腰かけています。
建物のはずれには、子ども用の広場があるため、子どもたちはブランコやすべり台で遊びます。犬を連れて散歩しているご近所さんも大勢います。ここではお互いが知り合いで、犬の名前までも知った仲です。
天気の良い日には、一線を退いた年配の女性たちが、孫と一緒にバスで毎朝ルースキー島(ここには函館校の本学である極東連邦総合大学があります)まで出かけ、海で泳いだりします。
私たちの暮らすアパートの昇降口付近には、野良犬が住み着いていますが、住人たちみんなで餌を与え、冬用の犬小屋まで作ってあげました。
雨が降らない日は、私たちも散歩に出かけます。アパートの中庭には、いつも多くの人が集まっているため、時間はあっという間に経ってしまいます。
サーシャは、最初は顔見知りしていた子どもたちとも、じきに仲良しになり、一緒に遊ぶようになりました。サーシャの機嫌は時々悪くなり、一人で遊ぶのを嫌がり、本に出てくる絵を指さしながら、一緒に遊んであげなければならないこともありました。こうして、毎日が過ぎていったのです。
9月初め、ウラジオストクをプーチン大統領が訪れました。街では様々なイベントが行われ、私は友人と共に街の中央広場で行われる無料のコンサートに出かけました。「トレツキー合唱団」という非常に有名なグループが出演しました。リーダーの名前がトレツキーというのです。彼らのコンサートチケットは、通常であれば非常に高いため、この時とばかりに大勢が聴きにやってきました。女性は着飾り、高いヒールの靴を履いて来る人たちばかりでした。そのため、観客を観察するのがとても興味深かったです。幸い私たちは、舞台近くに陣取ることができました。音楽は観客を魅了し、皆が手を上に挙げながら歌っていました。 
後日、テレビでコンサートの録画を見ましたが、非常に多くの人たちを夢中にしていました。演目は多彩で、ポップミュージックだけでなく、英語によるオペラのアリアもありました。こうしたコンサートは、街の大広場で行われます。
ウラジオストクでは、毎年夏にはロックフェスティバルが行われ、9月には国際映画フェスティバルも行われます。日本映画を見ることもできます。文化を楽しむことができるウラジオストクでの生活は、多彩で面白いです。
サーカス、オペラ、そしてバレエ劇場。他にもいくつもの専用劇場があります。チケットは手ごろな値段で、チケット売り場も街の中心地にあるため、簡単に手に入ります。
こんな素敵な街、ウラジオストクに是非来てください。きっと気に入ってもらえると思います。

学務課お知らせ

АБВГ-Day開催
11月9日、第9回АБВГ-Day(アーベーヴェーゲーデイ)を開催します。これは学年問わず全学生が集う「言語のお祭り」です。函館校で学ぶ日本人学生はロシア語で、本学より留学中のロシア人学生は日本語で日ごろの学習の成果を発表しあいます。
学年の垣根を取り払い、学習成果を試し、かつ舞台度胸をつけるチャンスです。すぐに準備にとりかかりましょう。


冬季休業
今年度の冬季休業は、12月12日(月)から1月6日(金)までです。
期間中、平日は事務局での各種手続き、図書室の利用は可能ですが、12月29日(木)~1月5日(木)は、年末年始休業のため校舎を閉鎖します。
後期授業再開日は1月10日(火)です。

お知らせ

ロシア人留学生が来函します

今年も、ロシア極東大学留学生支援実行委員会の招きにより、ウラジオストク本学で日本語を学んでいる学生が函館校に留学します。日本語を学び、日本文化を体験するこの事業は今年で20回目を迎えました。
留学生は、ホストファミリーや函館校の学生との生活を通して、生きた日本語や、実際に日本を訪れなければわからない日本の文化・習慣を直接肌で感じ取ります。
函館校の学生と留学生との合同授業も行われ、一緒に学校行事にも参加します。積極的に話しかけ仲良くしてください。
◎期間:10月26日(水)~11月18日(金)
◎留学生のお名前
 スタルノワ・リュバーワ    2年生
 コローヴィナ・ユーリヤ    2年生
 キスリャンスキッフ・ニキータ 3年生
 フォルマーリノフ・ユーリ   2年生

第18回はこだてロシアまつり

今年度の「はこだてロシアまつり」は、来年2月11日(土・祝 )に開催する予定です。当日のプログラムについては、詳細が決まり次第、ホームページでお知らせします。

短信

第2回オープンキャンパス終了

去る9月25日(日)に第2回オープンキャンパスを実施しました。同行者を含め、計15名の参加者をお迎えすることができました。
デルカーチ副校長による模擬授業では、1年生が、4月からの学習成果を披露しました。

学校行事や学生生活については、学生自治会役員の1年生2名が、画像と共に日本語とロシア語で紹介しました。今年3年目を迎えたJT夏季短期インターンシップについては、自治会役員であり、今年のインターンシップ参加学生でもあるロシア地域学科1年の工藤さんが、自らの体験と感想を交えて紹介しました。
卒業生の活躍では、平成17年度にロシア地域学科を卒業し、現在は建設機械メーカに勤務する板橋史展さんから、学生時代の失敗談を交えながら、函館校で学ぶ強み、そしてハバロフスクやモスクワでの勤務経
験に基づき、勉強も仕事も継続が大事であることなど、参加者のみならず、在校生に向けてもメッセージが送られました。
教職員および在校生との懇談では、ピロシキ(ロシアのパン)とロシアンティーを楽しみながら、楽しい会話がはずみました。
参加者のみなさんにとって、本校での学校生活を具体的にイメージできる機会となったのではないかと思います。

JTインターンシップに同行して
総務課長 大渡涼子

JT夏季休暇短期インターンシップは、日本たばこ産業株式会社(JT)様提供による奨学金を利用し、学生の学習意欲向上と将来の就職につなげるための研修として、2014年から3年間の予定でスタートしました。本来は学生だけでサンクトペテルブルクとモスクワを訪れ、企業訪問や見学を行う研修ですが、当初予定の3年目となる今年、継続の可否や内容について検証するため、事務局職員として同行することとなりました。
本校の学生はカリキュラムの中で全員ウラジオストクに留学しますが、ロシア西側に行く機会はなかなかありません。学生にとっては見聞を広げるまたとない機会ですが、事前学習や与えられる課題も多く、終了後には報告書の提出も義務付けられます。
大変ではありますが、大企業の東京本社やロシアの現地法人を訪問して、製造業・物流・商社、それに両市の日本センターなどを総合的に見ることができます。毎年受入企業団体のみなさまのご協力を得て、ご多忙の中、本校の学生のために業務内容の説明や現地で働くことについてなど、様々な質疑応答にもご対応いただいております。
日本の本社そしてロシアのオフィスを訪ねることにより、その会社がどういう業務を行っているのか、日本人としてどんな働き方ができるのかを両方向から見ることができる絶好の機会です。日本を代表する企業の第一線で働く方々からは本当に貴重なお話を聞くことができました。
目下学生の興味は「ロシア語を使ってどんな仕事ができるか」であるが、それより大切なのは「まずどんな仕事をしたいか」であり、ロシア語は後からついてくるもの。ロシアという国を好きになること、歴史や背景など総合的に勉強すること、ロシア語を使うチャンスはすぐにはなくても、いつかは来る、むしろ“ロシアロシア”と思いすぎないこと。英語ができることは大前提、ロシア語はプラスαであること。そもそも仕事をするうえで必要なのは語学ではなくコミュニケーション能力であり、積極的に話す、自分の思っていることを正しく伝えるディベート能力、そして継続する力である。また、現地で働くうえで、日本人と文化や考え方が違う点のバランスを取ることは大変だが、その難しさまたがおもしろいと思える、タフな精神力が必要であること。つまり、求められる能力は非常に高い。
学生にこのようなアドバイスを直接していただける機会は大変ありがたいものでした。振り返って我々はどうだったか。もっと事前の下調べも必要であったし、積極性も必要であったと反省するばかりです。このことは今年参加した3名の学生だけでなく、他の在校生も深く心に刻みつけてほしいと考えます。
今回同行して、いろいろな方々のご理解とご協力を得て成り立っている研修であることを実感し、あらためてすべての関係者のみなさまに謝意を表したいと思います。この検証結果を踏まえ、来年以降も奨学金を継続していただけるよう、より学生のためとなるプログラムの充実について、協議して参ります。

△サンクトペテルブルク大学学生との交流

学生からの投稿

「北方四島交流事業」報告
ロシア地域学科2年 宮田 絵梨香

私は7月1日から4日に実施された北方四島交流訪問事業で択捉島に行きました。今回の四島交流は、若者中心の訪問団ということで大学生が中心のメンバーでした。実際に自分の目で島の現状を見たいと思い、今回の訪問事業に参加しました。
1日に根室を出港し、夜に択捉島に着きました。この日は船内研修などがあり、2日に島に行きました。島に着いてまず目に入ったのがロシア語の看板と右側通行の車でした。
島内では中学校訪問や保育園、教会、消防署の視察やスポーツ交流や意見交換会がありました。一番印象に残ったのは、ホームビジットです。ホームビジット先のロシア人には、海や温泉に案内してもらいました。
視察では島の方の暮らしぶりを見ることが出来ました。意見交換会などの交流では、少しですが島の子供たちと話すことが出来ました。島の子供たちと話して驚いたのが、日本語を話せる子が何人かいたことです。3年くらい勉強している子もいました。自分のロシア語力を試す良い機会だと思い話しかけましたが、逆に日本語で話してくれて、会話のほとんどを日本語で話しました。日本語で積極的に話しかけてくれて嬉しかったです。島には日本語教師の派遣もあり、日本語を学ぶ機会があると聞きました。
今回の訪問では島の方に温かく迎え入れていただき、島の印象も変わりました。想像以上に道路が整備されおり、スポーツ文化会館や保育園は、新しい建物でした。保育園では、一人用の小さなベッドがいくつも並んでいたのがとても印象的でした。まだ整備されていない道路は、今年中に整備していくという話を聞き、島にお金が投資されていることがよくわかりました。
限られた時間の中でしか交流ができないのは残念ですが、今回の訪問を機に領土問題に対して更に関心を持っていきたいと思います。

△択捉島でのロシア人との交流の様子

JT奨学金夏季短期インターンシップ
ロシア地域学科2年 齋藤 航

今回、私はJT奨学金によるインターンシップに参加し、モスクワやサンクトペテルブルクでの企業訪問の他、サンクトペテルブルク大学で日本語を学んでいる学生と交流をしてきました。
企業訪問では、本校の卒業生がどのように働いているか、自分が卒業した後に社会に出て働くために必要なことをたくさん学びました。企業訪問だけでなく、大学生との交流は、ロシア語を実践する貴重な体験となりました。ロシア語で自己紹介を行い、私がこれまで両親とモスクワへ三度訪れたことや、この極東大学に入学した理由等を伝えることができました。
その一方で、サンクトペテルブルク大学の学生たちが話す日本語はとても美しく、正直私のロシア語能力はまだまだ足りていないと感じました。
私は今回初めてサンクトペテルブルクを訪れました。自由時間には、エカテリーナ宮殿やペテルゴフ、美術館、さらには大型ショッピングモール等に足を伸ばし、ロシア人の豊かな暮らしを観察することが出来ました。ロシアの伝統料理ブリヌイ、ボルシチ、ウハー、ペリメニ等を食べ、本場ならではのロシア料理の美味しさに感動しました。
このたびのインターンシップを通して自分が感じたこと、勉強になったことは、どの企業に就職するためにも英語・ロシア語力が大変必要である上、ロシアで働くことは想像以上に厳しいものだということです。しかしそのような現実の一方で、ロシアに住むという「夢」も想像することができました。
最後になりますが、自分に貴重な経験を得る機会を与えてくれたJTをはじめとする訪問先の方々、学校関係者のみなさん、ガイドさんを含む現地の方々に心から感謝申し上げます。

ロシア地域学科1年 工藤 文弥

将来ロシア語を使って仕事をしたいと思い、ロシア現地に行かないと分からない事情や、雰囲気を知り、将来に繋がるヒントや何かを掴める一歩になるのではないかと思い、JT夏季休暇短期インターンシップ研修に応募しました。
最近の日本は喫煙率が減り、さらに2020年の東京オリンピックに向け受動喫煙防止法の制定も言われているので、今後のタバコ業界はどうなるのかと思っていましたが、JTを訪問して、自分が思っていた以上に電子タバコの需要が高いことを知りました。自分もタバコの煙は好きではないですが、JTのプルームテックは火を使わないので煙が出ず、非喫煙者の方にちゃんと配慮した商品だと思いました。この事を詳しく知り、今後の日本は電子タバコの需要が上がり、喫煙者と非喫煙者が共存できる社会に向かっていくような気がしました。
自分は初めてロシアに行ったためロシア訪問は驚きでいっぱいでした。まずは食についてです。この機会に初めてロシア食を食べましたが、今まで口にしなかったのを後悔するくらいとても自分の口に合うものばかりでした。特にペリメニという日本では水餃子のような食べ物が美味しかったのを覚えています。
次に、サンクトペテルブルクとモスクワの建物についてです。サンクトペテルブルクのネフスキー大通りには帝政ロシア時代の建物が多く、現在も使われており、日本とは違う雰囲気を感じる事ができました。ネフスキー大通りから、グリボエードフ運河に沿って見る「血の上の救世主教会」の景色は、さすが芸術の都ペテルブルクだと改めて実感しました。
逆にモスクワの建物は、スターリン建築による左右対称な建物もあれば、東京のビル群を彷彿とさせるモスクワシティのビル群もあり、今と昔を上手くマッチさせているような印象を受けました。
自分がロシアで大事だと思ったのは、やはりコミュニケーションです。まずは人と話さない事には何も始まりません。しかし、ロシアに行って自分の能力や知識がまだまだ足りないことを痛感しました。さらに、サンクトペテルブルグの大学生たちと食事会で話す機会があり、綺麗な日本語を使い、日本人以上に日本について興味を持っていることを知り驚愕しました。
一年生の内にこのような経験ができ、ロシア語だけではなく、他の分野の勉強も重要なことに改めて気づくことができました。今後の課題としては、多角的にロシアを知る目を養い、今後ロシアに行く時に繋げられたらと思います。

ロシア地域学科1年 鈴木 康太

私は夏季短期インターンシップに参加させていただき、ロシア(モスクワ・サンクトペテルブルク)で企業訪問や日本センター訪問、ペテルブルク大学の学生との交流などをさせていただきました。そして、たくさんの人から様々な話が聞けてとても良い経験になりました。
今回、海外に初めて行って、日本しか見てこなかった私はとても衝撃を受けました。食べ物も違えば、言語も違う。仕事態度も違うし、建物の雰囲気も違う。日本での常識が世界の常識ではないと聞いたことはあり、わかっていたつもりでしたが、こんなにも違うものかと驚きました。現地に行かないとわからないこともたくさんあれば、現地で働かないとわからないことがたくさんあると実感しました。企業訪問のときに聞いた現地で働く日本人の話は、とても興味深く、大変貴重だと思いました。
ロシア語を学び始めて約4か月。ロシアで何かしらわかるかなと思っていましたが、ほんの少しだけ知っている単語を聞き取れただけで、ほとんどわかりませんでした。現地でお会いしたロシア人は、みなさん日本語がとてもうまく、自分も頑張らなくてはいけないと、良い刺激になりました。
このようなすばらしい機会を与えてくださったJT様、お忙しい中、時間を割いてくださった訪問先の方々、そして学校の方々、本当にありがとうございました。

函館日ロ親善協会からのお知らせ
7~9月の主な活動実績

○ 9月10日(土)、11日(日)

「はこだてグルメサーカス2016」に今年も出店いたしました。
今年のグルメサーカスは、新幹線開業記念事業として東北6県お祭りひろばが開催されるなど昨年以上のにぎわいでした。当協会でも例年通りロシア料理のピロシキ・ボルシチをご用意し、大変多くの会員・市民の皆様にご来場いただきました。誠にありがとうございます。


○ 9月29日(木)
在札幌ロシア連邦総領事館函館事務所ソコロフ・ボリス所長歓迎パーティーを開催いたしました。それに先立って行われた所長の講話では、9月にウラジオストクで開催された「第2回 東方経済フォーラム」の結果について詳しいご報告がありました。

○10月以降の予定
12月上旬には協会恒例のクリスマスパーティーを予定しております。内容が決まりましたらご案内いたしますので、是非ご参加ください。

≪係りより≫

今号も学生から北方四島訪問やJT夏季短期インターンシップの体験記が寄せられました。学校内でのロシア語学習のみならず、学外での様々な体験を通して、日々成長していってほしいものです。(倉田)